2022年08月05日
トリーター:山本

オトヒメクラゲの展示始めました

7月24日から標本で展示していたウラシマクラゲ科の新属新種「オトヒメクラゲ」ですが、ようやく江の島周辺で採集することができ、昨日(8月4日)から、アクアワールド茨城県大洗水族館 と同時に世界初の生体展示をしています!

“えのすい”での展示場所はここ、「皇室ご一家の生物学ご研究」です。
このクラゲについての詳しい話はここ([ウラシマクラゲ科の新属新種 オトヒメクラゲ(乙姫水母)])で書きましたので、今回はちょっとした追加情報を紹介していきます!

まずはオトヒメクラゲの稚クラゲから。

この写真は、傘径が2mmほどの個体です。本種の生活史が完全に分かっていない以上、言い切ることはできないのですが、恐らくポリプから遊離したての稚クラゲは、既に本種の特徴である8本の触手を持っています。
実はヒドロ虫類の中で、遊離したてで触手を8本持っているクラゲは少数派で、多くのクラゲが2本や4本です。
その後、大体のクラゲは成長にともない触手の数が増えていきますが、成長しても8本のままというのはなかなか珍しい気がします。
このサイズで既にオレンジがかっており、採れるとすぐに分かります。

こちらは、近縁であるウラシマクラゲと並べた写真です(左:オトヒメ 右:ウラシマ)。

そして、それぞれが成長したらこんな感じ。

どちらも同じ科に属するため、やはり姿はなんとなく似ていますが、注目していただきたいのはここ。

傘の表面にある「外傘刺胞列(がいさんしほうれつ)」と呼ばれるものを持つことが、この2種の大きな特徴です。この外傘刺胞列は、傘に高密度に刺胞(毒針の備わった細胞)を備えることにより、外敵から身を守るのに役立っているといわれております。
2種を見比べてみると、各触手の基部から、オトヒメクラゲは全ての個体が1本ずつ計8本、ウラシマクラゲは成長度合いによって変化し、個体によってバラバラの本数です。
単純に考えたら、たくさんあればあるほど身を守れそうな気がしますが・・・
各々ちょうどいい本数なのかなあ・・・
種間で違いがあるのって面白いですね。本当だったら生きているウラシマクラゲと並べて展示したいのですが、今年は江の島周辺で毎年必ず出現するウラシマクラゲが、嘘のように姿をみせてくれません・・・ 。
太郎はどこへ行ってしまったのでしょう。今後に期待です。

これまでこのクラゲが出現しても、まだ発表してないから展示に出せない・・・!という苦い思いをしてきたので、ようやく生きた姿をみなさまに見ていただけるようになり、素直に嬉しいです。

今後も注目ポイントなどなどたくさん紹介していきますので、江の島にとって特別なこのクラゲについて、ぜひ詳しくなっていってください!

皇室ご一家の生物学ご研究

RSS