この時期の毎年恒例一押しイベントと言えば・・・
そう! クサフグの集団産卵です!
クサフグは日本海、瀬戸内海、太平洋の限られた場所で産卵することが知られており、なかでも山口県光市のクサフグ産卵地は県の天然記念物に指定されています。
当館の近くの江の島でも、5月から 7月の大潮前後に、波打ち際で集団産卵をすることが知られています。神奈川県のクサフグの産卵はまだ見たことが無かったので、早速行ってきました。
波打ち際に到着したのですが、クサフグの姿は見当たりません。
それもそのはず、産卵前のクサフグは特に神経質で、足音や人影などを敏感に察知して、直ぐに沖に逃げてしまいます。そこで、水中にカメラを沈めて少し離れてみてみることにしました。
カメラとスマートフォンをBluetoothで連動させて観察していると・・・
来ました! 来ました!!
陸上から遠目にみてもよくわからなかったのですが、水中に沈めたカメラには100や200では収まらないくらい数のたくさんのクサフグの群れが映っていました。
どの個体も腹部がぷっくりと膨れています。生殖腺(卵巣もしくは精巣)が大きくなっているのでしょう。
かわいいなぁとカメラの映像を見ていたそのとき、近くでバシャバシャという音がしました。
波打ち際で水しぶきが上がり、クサフグたちの産卵がはじまったようです。
最近の研究で、1匹が産卵した際に海水中に放出される生理活性物質がフェロモンとして働き、周りにいる個体の産卵と放精を促すことで、集団産卵が起こることが分かっています。
水中のカメラを見ると、次々に放精した精子で白く濁り、画像ではわかりにくいですが、よく見ると小さい卵も確認できました。
持ち帰って顕微鏡で見ると、直径0.8-0.9 mm程度の小さな卵が見えました。トラフグ、ヒガンフグなどの受精卵は白く濁った色をしていますが、クサフグは透明です。
また、この卵にも毒があります。フグ毒はヒトには無味無臭ですが、魚には毒があるのが分かるようで、他の魚から捕食されないように役立っていると考えられています。
およそ一週間後には、全長約2 mmの小さなクサフグが誕生し、広い海に向けて旅立って行くのでしょう。
当館の相模湾ゾーン 出会いの海水槽のクサフグを見ると、ごはんも食べていないのに、いつもよりお腹がぷっくり。クサフグが産卵に集まる場所はいくつか条件があり、これまでに水槽の中で自然に産卵した例は知られていません。
いつか水槽の中で集団産卵が観察したいものです。
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