2023年07月14日
トリーター:小形

ペンギンが飛行機に乗りました。

6月10日の城戸トリーターの日誌 にありますが、少し前に当館のフンボルトペンギン「コウ」と「サチ」が鳥羽水族館へ、「サン」と「レイ」がおたる水族館へそれぞれ繁殖を目的として移動しました。

フンボルトペンギンは国内の多くの動物園や水族館で飼育されていますが、CITESの附属書Ⅰ(ワシントン条約の中で一番上位のランク)に指定されており、野生下では絶滅が危惧されている種類になります。そのため国内での移動であっても、環境省の許可書が必要になります。環境省の許可をもらうには必要書類を提出した後、少し時間を要します。また、許可が出たら1か月以内に移動をおこなわないと、全ての手続きが一からやり直しとなってしまいます。

今回2園館への搬出に関するやり取りや手続きを担当し、実際の搬出にも行ってきました。そのうちおたる水族館への搬出についてきょうはお話しします。

おたる水族館へは、飛行機を使っての移動をおこないました。現在当館にいるメンバーでは、ペンギンの空輸を経験している者がおらず、何もかも分からない状態からいろいろと手分けをして調べました。何度も航空会社に確認の電話をし、親切に教えていただきました。

空港に着いたらまず貨物の受付の場所へと向かいます。そこでペンギンたちとは一時お別れです。新千歳空港に着くまで会うことはできません。少し心配でしたが「よろしくお願いします!」と2羽を受け付けの方に託し、私も飛行機へと乗り込みました。

その日の天候はちょうど日本に台風が大接近しているときでしたが、飛行機は大きく揺れることもなく、無事に新千歳空港へと到着しました。
しかしどうしても離着陸のときは揺れるので、ペンギンたちは少し怖かったかもしれません。それでも、新千歳空港でペンギンたちを引き取ってすぐに顔を見てみると、案外けろっとした表情でした。

空港からはレンタカーを使って移動をしました。
車内では、落ち着きつつも終始立ったままの2羽でした。笑
時折声をかけてあげたり、暑くならないように霧吹きで体に水をかけてあげながらおたる水族館を目指しました。

そして無事に当日の午後、おたる水族館へ到着し、ペンギンたちを引き渡すことができました。着いて数時間で「サン」も「レイ」も魚を食べており、ほっと一安心です。
おたる水族館でも2羽とも“えのすい”での名前を使ってもらえるとのことで、新しいタグを早速着けてもらっていました。

そして! なんと!! 翌日には海までお散歩をするイベントに「サン」が自発的に参加していました!!
なんとなく、そんな予感もしつつ、本当に参加したので驚きです。笑
「サン」は“えのすい”でのペンギンショーや、現在やっているペンギンミニライブの中でも活躍する存在でした。

先頭でごはんを貰う「サン」。

「レイ」はまだ少し慣れていない感じもありましたが、楽しそうに探検しているようすでした。

無事に搬出が完了し、安堵の気持ちもいっぱいでしたが、帰るときには少し(正直に言えばかなり)寂しい気持ちでいっぱいでした。
やはり大切に飼育して一緒に過ごしてきた仲間です。「サン」は私がペンギン担当になったときからおり、ペンギンたちの中でも中心的な存在でした。
また「レイ」は、生まれたときからずっと見ており、人工育雛で育ったわけでもないのに、人に甘えるような行動を取る少し珍しい性格でした。
他のペンギンたちと仲良くしていると、顔を斜めにして怒ったような表情で走ってくるのです。それで構ってあげると、満足そうにドヤ顔を他のペンギンたちに見せていました。そんな姿がとても愛らしかったです。

永遠のお別れではないものの、頻繁に会いに行ける距離でもないので寂しい気持ちが大きかったですが、今はおたる水族館で元気に過ごしてくれていることを心から願っています。また、良い繁殖相手を見付けて子どもが生まれたりすれば、とても嬉しいことです。

「サン」、「レイ」、そして鳥羽水族館へ行った「コウ」、「サチ」。
みんな元気で幸せに暮らしてね!!

ペンギン・アザラシ

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