2023年09月19日
トリーター:杉村

魚のけがって治るんですよ!! その2 Part2

前回は、ムツがけが(咬傷)をして、バックヤードに収容されるまでをつづってきました。
今回は、Part2ということで、前回(2023年7月15日)の続きの治療のようすやけが(咬傷)が治っていくようすをご紹介します。

治療の方法としては、まずは傷口をできるだけきれいに保つために、殺菌消毒剤を患部に塗布していきます。当館では、粉末の殺菌消毒剤使っています。薬剤に少しだけ水分を含ませて、ねばねば状にすることで、しっかりと患部に貼り付き傷口を守ってくれます。こうすることで、私たちが使う「絆創膏」のようになって、傷口から細菌の感染を防いでくれます。
また、併せて水溶性の抗菌剤で薬浴をすることで、飼育水も雑菌等を減らしていきます。基本的には、患部の赤裸の状態がなくなるまで、毎日続けていきます。

摂餌状態が良好、体力があれば、このまま数週間も続ければ、傷口は白くなって、新たな皮膚ができてくれば安心なのですが、今回は傷も深かったせいでしょうか、2週間を経過しても餌を食べる気配がありませんでした。
傷口は徐々に良くなっているようでしたが、痩せが心配です。

27日目27日目

そこで、まずはエビ類のミンチを強制給餌で与えることにしました。
給餌をおこなうときに、思っていたより暴れたので苦労はしましたが、体力はあったようすでちょっと安心したのを覚えています。
また、水槽内に糞も確認できましたので、消化管は正常に機能しているようでした。・・・腸管は傷ついていなかったんですね・・・餌が消化吸収できていれば治る確率は一気に上向きます。
・・・とは言っても、いつ症状が悪化するか、予断は許さない状況ではありますが・・・
その後、数回の強制給餌をおこなって、ミンチにも徐々に魚を混ぜるなどした結果、発症から1か月ほどで自力での摂餌がみられるようになりました。

こうなれば、後はしっかり餌を継続して与えて、体力を戻してあげれば感染症の心配もほぼなくなります。
患部の赤味もすっかりなくなっています。

42日目42日目

摂餌も良好で患部も良くなったので、治療開始から48日目で治療は終了しました。
でも、まだ幹部が丸見えの状態なのでそこから3か月ほどかけて、しっかり栄養を取らせて皮膚や鱗の再生を促して、見た目も事故が起こる前とは、遜色ないところまで元に戻りました。

魚たちもしっかりケアして、体力をつけてあげれば元気になるんですよ。私たちとは何ら違いが無いんです。

そして、いよいよ再度展示水槽でみなさんに見てもらえるまでになりました!!
涙腺が・・・
きょうも元気に水槽内でみなさんにその姿を見せてくれています。
右体側をよ~く見てもらえれば、一緒に展示している他のムツとは違い、傷の後があるので見分けがつきますよ。
事故から復帰までの約5か月間でした。

最後にもう一度、「魚のけがって治るんですよ!!」

66日目66日目

RSS