2023年10月09日
トリーター:西川

私の1日の仕事

前回のトリーター日誌 で「今年の夏は暑いですね~」と言っていたのに、1か月経つとかなり涼しくなりますね。きょうは雨も降っていてむしろ寒いくらいです。ぶるぶる。

今回の日誌では、「私の1日の仕事」について話していきます。
以前、実習に来ていた学生から「西川さんの1日の仕事内容について教えてください」と質問されたことがありました。そのときは飼育員の数ある仕事の一部しか説明できなかったので、この場でリベンジさせてください。

みなさんは水族館の飼育員と聞いてどんな仕事をイメージしますか?
魚にエサをあげたり(給餌)、水槽を洗ったり、ショーに出演したり。水族館に行ってこんな仕事をしているところに出会った経験があるかもしれません。
でも実は、私たち飼育員は、みなさんから見えない場所で仕事をしていることが多かったりします。

少し話は逸れますが、水族館飼育員の仕事内容を紹介するには、博物館の説明をするのがわかりやすいと思います。
まず前提として水族館は博物館の一種です。そして、博物館は博物館法という博物館を定義付ける法律のもとで機能します。
ちょっとややこしくなったけれど、つまり、水族館にも博物館法は適用されるということです。
この法律では博物館の目的も決められていて、西川なりにぎゅっとまとめると、主に4つの働きに大別されます。

「展示・教育」「保存・管理」「収集・整理」「調査・研究」

そのため、水族館で働く私も、この4つの働きに沿って日々仕事をしています。
始めに挙げた魚の給餌や水槽掃除は「保存・管理」ですかね、ショーの出演は「展示・教育」に当たります。みなさんがイメージする水族館飼育員の仕事は、この2つに区別されるものが多いのではないでしょうか。
「収集・整理」には生物の採集や水槽移動、標本の整理などが含まれ、それに加えて「調査・研究」をしています。

本来はこれら4つの働きを均等におこなうべきですが、各水族館によってバランスが違うと思っていて、それがそれぞれの水族館の魅力になっています。
私は、水族館という場所だからこそ展示や解説に説得力を持たせたり、生物を飼育する意義になる「調査・研究」が大切だと思っていて、1日の仕事のどこかでは必ず「調査・研究」に触れるようにしています。
とはいっても毎日必ずやる仕事(日常業務)があるので、ずっと研究をすることはできません。私の仕事の割合は、「展示・教育」4割、「保存・整理」4割、「収集・整理」1割、「調査・研究」1割といったところでしょうか。

1日にどんな仕事をしているのか具体的に紹介しましょう。

1, 午前:水槽掃除、ショーの出演
午後:魚の給餌、死因解明作業、研究、展示更新作業

2, 午前:水槽掃除、魚の給餌、ショーの出演
午後:水槽掃除、魚の治療、ショーの出演、研究

と、こんな感じです。
一例なので、生物の採集や研究発表に丸一日使うこともあります。
水槽掃除や魚の給餌、ショーの出演は日常作業として毎日やっています。
研究に関しては個人でやることが多いので、基本一人作業で日常作業のすき間時間にやることが多いですね。
西川の研究内容は、展示の説得力をあげたり、水族館として活動の幅を広げることだったり、魚を治療したりすることに焦点を当てているものが多いです。
自分の働きで “えのすい” に留まらず水族館業界のためになること、さらにはみなさんの暮らしを豊かにすることができたらいいなと思って仕事をしています。

アユ解剖風景アユ解剖風景

さて、つらつらと述べましたが、水族館飼育員の仕事すべてを紹介することはできなかったです。博物館業務は本当に多岐に渡りますよね。それが楽しいところです。
「1日の仕事内容について教えてください」と質問をしてくれた実習生のように、水族館飼育員を志望する方は、ぜひいろんな飼育員に話を聞いてみてください。きっとそれぞれの背景に沿った理想があって、仕事の仕方が違うと思います。
誰かのまねではなく、自分なりの飼育員像が見えてくると思いますよ。

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