2023年11月03日
トリーター:山本

9月の毎日クラゲ採集結果 2023

9月と10月があっという間に過ぎ去り、急に秋。寒くなってきたなーと思ってたら、きょうはすごく暑い! 私は気温の変化に負けて絶賛風邪ひき中です。みなさまもお気を付けください。
ちょっと前のことになりますが、今年の 9月はテーマ水槽で「クラゲの 9月は海月月」と題してクラゲを紹介していました。6人のクラゲ担当トリーターがそれぞれ好きなクラゲ(…じゃないやつもいましたね!)を紹介していたのですが、みなさまご覧いただけましたでしょうか。何事もなく無事にテーマ水槽を終え、気付けば 11月です。
実は毎年、「毎日クラゲ採集」の結果を 9月分だけまとめて日誌で紹介していたのですが、今年分がよーーうやくまとめられました。これまでまとめた 2020年、2021年、2022年の 9月の結果と比べて見ていきたいと思います。

2020年09月30日 9月テーマ水槽~毎日クラゲ採集~
2021年10月13日 9月テーマ水槽~毎日クラゲ採集 2021~
2022年10月07日 毎年恒例。9月の毎日クラゲ採集結果

これは 2023年 9月 1日~ 30日までの間に江の島で毎日採集をした結果です。例年の通り、黒く塗りつぶされているところが「出現を確認した(採集した)」ことを示しています。何も塗りつぶされて無い日は、行ったけどなにも採れなかった日か、そもそも採集に行けなかった日です。
9月中、江の島では合計 18種のクラゲの出現を確認することができました。2020年は 31種、2021年は 25種、2022年は 11種でしたので、種類数はまずまずといったところでしょうか。

まずは、各クラゲたちの「出現回数」に注目です。出現回数ごとに上位種をランキング形式で発表します。

第3位 カブトクラゲ(5回)第3位 カブトクラゲ(5回)

8月にも何度か出現しており、時には近くの片瀬漁港で大量発生しておりました。9月だけで見れば 5回ですが、今年の夏全体を通して考えると今年はなんだかカブトクラゲが多い気がします。今日(11月 3日)も採れました。
実はこのクラゲ、すごく寿命が長くて、飼育下だと状態よく維持できれば同じ個体を 2年くらいは生かすことができます。海にいるカブトクラゲたちは生まれてどのくらい経っているのでしょうか。気になりますね。

第2位 カラカサクラゲ(6回)第2位 カラカサクラゲ(6回)

2020年、2021年では 20回以上出現していましたが、2022年は 2回でした。結局去年は 10月以降もそんなに出現せず、月に 2~3回ぱらぱらと出たくらい。(あくまで我々の採集ポイントでは)カラカサクラゲが少ない年となりました。
今年も今のところ去年と変わらないような回数で、漁港ではちらほらという感じでしょうか。ただ、きょうみたいに穏やかな海ならきっと、船でちょっと沖に出ればたくさん見ることができると思います。
少し話がそれますが、この前休みの日にみんなで伊豆へ魚採りに行ったとき、このクラゲに近い仲間の「オオカラカサクラゲ」を採集することができました。カラカサクラゲもオオカラカサクラゲも、これからがハイシーズン…のはず。展示ができたらいいなあ。

第1位 エイレネクラゲ(17回)第1位 エイレネクラゲ(17回)

2020年、2021年、2022年に加えて今回も出現数 1位の座を守り抜き、今年の 9月もほぼ毎日その姿をみせてくれました。さすが江の島で最も出現回数の多いクラゲ! 普通種がいつも通り普通に出現するっていいですね。安心します。
よくエイレネクラゲを見たお客さまに「こんな小さいクラゲどうやって見つけるんですか?」と聞かれることがあるのですが、実は、私たちからしたらこのクラゲは「それなりに大きいクラゲ」で、海にいても目で見つけることができます。じっと海を見つめていると、ぽこぽこと水面が動いて見えるため、慣れると簡単に見つけられますよ。夏から秋の間、(ほぼ)毎日採集の展示を守り抜いてくれる心強い存在です。

まとめると、今年もエイレネクラゲが圧倒的に多く、他のクラゲはちらほらという感じでした。なんとなく去年の結果と似ている感じです。

次は単発で出現した、気になる種を見ていきましょう。9月 26日、渡部トリーターが 7種のクラゲを採集してきてくれたのですが、その中にレア種が…!

形がちょっと崩れてしまっていますが、イカリヨツボシクラゲというクラゲの仲間と

フチコブクラゲというクラゲの仲間です。
これらはまだしっかりと種同定はできていないのですが、少なくとも江の島では初記録のレアクラゲたちです。実は今年の 3月に、江の島で出現するクラゲ類をまとめた報告を出させていただいた(https://www.jstage.jst.go.jp/article/nkpmnh/2023/44/2023_43/_article/-char/ja/)のですが、これまで江の島で記録されているクラゲは 86種です。そこに、記録されてないクラゲが 2種新たに追加されることになります! 渡部トリーター、グッジョブです!
9月 26日は他に、カラカサクラゲ、ヤジロベエクラゲ、ヒメツリガネクラゲ、ヒトツクラゲ、クシクラゲの仲間が採れたようで、外洋性のレア種ばかり。その日の気温は 29.2℃、表層水温は 28.0℃、塩分は 35‰、風向は東北東で、穏やかな風だったようです。
注目すべきは塩分でしょうか。普段我々が採集を行っている江の島湘南港のポイントでは、塩分が大体 30~ 32‰くらいで、その日は普段とは違う感じの海水が漁港に流入しているのが分かります。前後では毎日のようにエイレネクラゲが採れていますが、その日は採れなかったところからも、その日だけは漁港内のようすが普段と違ったんじゃないかなーと思います。塩分は今年度から測り始めたのですが、手間が増えた分考察の幅が少し広がったように感じます。よかったよかった。

最後に、2022年の日誌でも紹介した水温のグラフです。今年分は緑色の線で表しています。日によっては採集場所が湘南港ではなく片瀬漁港になっているため、データとしてはちょっとアレですが、あくまで参考程度にみてください。

9月の後半は例年に比べて水温が高かったようです。漁港のような閉鎖空間では水温が気温の影響を大きく受けるため、やはり暑い日が多かったのかもしれません。だからと言って 9月に出現するクラゲの種類が明らかに変わった訳ではないのですが、10月、11月とも併せて見ると、もしかしたら何らかの傾向がみられるのかもしれませんね。

海はあまりにも広大すぎて、それが合ってるかどうかは誰にもわかりません。が、得られたデータからいろいろ考察するのは楽しいです。勝手に知った気になるのが一番よくないなと思ってるので、引き続きちゃんと海を観察し、こつこつデータを積み重ねて、当初からの目標である「江の島のクラゲには誰よりも詳しくなる」の実現に向けて頑張りたいと思います!

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