“えのすい” ではカタクチイワシをはじめ、さまざまな魚類が繁殖しています。 以前の私の日誌 でも繁殖したシモフリシマハゼの話をしました。
シモフリシマハゼの場合、孵化仔魚(生まれてすぐ)の全長が 2.52mm 程度です。その口となればとてもちっっっっちゃいです。
今回は今、魚の赤ちゃんにあげるために育てている小さな餌、コペポーダについて話をします。
水族館で扱う餌には多くの種類があります。
大きく分けると冷凍餌料、配合飼料、活餌でしょうか。
冷凍餌料は、読んで字のごとく冷凍している餌で、解凍して使用します。大きなサバ類やイカ類、小さなプランクトンも含み、多くの種類があります。冷凍しておけばよいので、維持管理が簡単ですね。
配合飼料は、簡単にいえば、人間が魚用に作った餌です。ご家庭で金魚やメダカに小さい粒の餌をあげた経験がある方もおられると思います。“えのすい” でも魚類ではマイワシ、カタクチイワシにあげることが多いですが、数mm の魚の赤ちゃんに与える用のものもあります。
最後に活餌です。これは生きている餌のことですが、“えのすい” で毎日使っているのは、アルテミアとシオミズツボワムシです。アルテミアは主にクラゲに、シオミズツボワムシはカタクチイワシをはじめ、サンゴ類の餌としても使用します。
活餌の強みは何といっても動くことです。生きているからこそですが、動いていることで、魚の赤ちゃんの刺激になり、餌を食べてくれます。冷凍餌や配合餌料でも口に入る大きさのものもありますが、動いていないと餌と認識せず、摂餌しません。
で、今培養している餌は、アルテミアでもシオミズツボワムシでもなく、「カイアシ類」もしくは「コペポーダ」と呼ばれている生き物です。
アルテミアやシオミズツボワムシにももちろん栄養がありますが、一般的に DHA が少なく、その栄養を強化させてから魚に与えています。
その点、コペポーダは自身で DHA を合成することができ、栄養価の面で利点があります。この DHA が海水魚の育成に重要なのです。
実は、このコペポーダを培養している水族館の数は非常に限られます。理由はいくつかありますが、その一つに「大量培養が難しい」ということです。
アルテミアは乾燥した卵が大量に販売されており、大量に入手することは容易です。
シオミズツボワムシは培養技術が進んでおり、1ml に 1,000個体を超える密度で維持できるまでになっています。対して、コペポーダは 1ml に 5個体くらい。。。。シオミズツボワムシの 200分の 1 以下です。
ここから、算数の話が出てきます。苦手な方は読み飛ばして、次の段落へ・・・!!
たとえば、ハゼなどの赤ちゃんを育てる時に 100L の水槽で育成しようとする場合、“えのすい”ではハゼを育成している水槽の水 1ml あたり、およそ 30個体になるように与えます。つまり、300万個体必要です。ということは、シオミズツボワムシを培養している水の 3L 分を与えればよいのですが、コペポーダを同じ個体数入れようとすると、600L 必要です。ハゼの赤ちゃんを飼育している水槽より、餌を培養している水槽のほうが 6倍大きい!! もちろん、そんなスペースはなかなかありません。
お疲れさまでした。算数を含めた話題はここまでです。(_´Д`)ノ
高密度で培養できれば、その大きな培養水槽を用意するさまざまなコストを減らすことができるため、日々、多くのトリーターやさまざまな方のご協力を得ながら作業を続けています。
そのかいあってか、少なくとも維持培養はできるようになり、まだ何となくですが数を増やすことに成功しました。
コペポーダが安定して培養できれば、シオミズツボワムシとアルテミアだけでは育成できなかった多くの魚が育成できます。“えのすい” が次のステージに行けるように、あしたからも顕微鏡をのぞいていきます!