みなさんこんにちは、八巻です。
12月28日から始まった「えのすいの深海展」ですが、今回私は担当者として、準備を進めてきました。私が専門にしてきた深海生物にフォーカスした展示なだけに、その手にも力が入りました!
そんな深海展の裏側を私のトリーター日誌で何回かにわたり、お伝えしていきたいと思います。
1回目の今回は、相模湾ゾーン 相模湾大水槽 相模の沖の前の「深海洞窟で新種を発見する調査プロジェクト D-ARK」の展示、「未知だらけの深海」のコーナーの最後に登場するダイオウイカの展示に関するお話です。
今回の深海展では、さまざまな機関の多大なるご協力を得て、開催にこぎつけることができました。ダイオウイカの展示もそのひとつです。
深海展の企画を練る中で、深海といえばやはりダイオウイカは外せないよね、ということで、展示したい生き物の一つでした。
最初は標本をお借りしたいと考え、方々に連絡をさせていただいたものの、なかなか貸出可能な標本が見つからず苦労していたところ、なんとかかごしま水族館さんから世界一小さいダイオウイカの標本を借用させていただく許可を得ることができました!
巨大なダイオウイカも最初はこんなに小さいということを知っていただくとても良い標本ですが、ダイオウイカの大きさを一目で感じてもらいたい、また生きているときの美しさを知ってもらいたい、という欲張りな願いが沸々と湧いてきたのです!
そんな中、映像については、世界初の深海におけるダイオウイカの姿を捉え、深海ブームの火付け役にもなり一世を風靡した、あの貴重な映像をNHKエンタープライズさんからお借りすることができました!
残るはダイオウイカの大きさが一目で伝わる巨大な模型か標本です。
そこで宮崎県総合博物館さんが、過去の特別企画展で作成した大型模型をお持ちであることが分かり、借用の可能性を伺ったところ、快く承諾してくださいました!
しかし、全長6mにもなる巨大な模型です。
果たして宮崎から運ぶことができるのか、ということが大きな問題でした。
模型は3つに分かれていて、胴体、触腕、そして触腕以外の腕と頭部です。
中でも触腕以外の腕と頭部は縦横高さとも2.4m近い巨大さであり、トラックに入るのか、搬入できるのか、ということが、何よりの心配のタネでした...
とはいえ計算上はなんとか輸送できるはずで、館内の移動も相模湾大水槽の吹き抜けを活用すれば相模の沖前に持ってくることができるとわかったため、思い切って進めることにしました!
輸送について「しんかい2000」を運んでくださった夏島運輸さんが相談に乗ってくださり、輸送することが可能になりました。
館内の移動については不安が残るものの、今回のダイオウイカ模型の製作者でもある不思議博物館の角さんという方が設営にいらしてくださることになり、がぜん厚い布陣で輸送と設営の日を迎えることができました!
輸送当日は宮崎県総合博物館さんに伺い、くだんのダイオウイカ模型がトラックに乗るところを見届けました。
そして深海展開幕の前日、12月27日に無事えのすいに到着したのです!
問題は相模の沖前までどのように運ぶかですが、これが面白いもので、物事頭の中の計算だけでは可能性を狭めるということを改めて痛感しました!
単純に高さや幅を測ったときは通らない予定だった大水槽を取り巻くスロープの通路が、実際に通してみると、回転したり斜めにしたり、複雑なかたちの腕と頭の部分の体勢を変えることで通り抜けることができたのです!!
ここでやっと、ずっと私の頭を悩ませ続けていたダイオウイカの模型をどのようにして展示場所まで運ぶかという問題も、見事に解決したのです!
しかし安心も束の間、どのように吊るかという問題が目の前に横たわっています。
これも計算上はイカの腕がかなり下にきてしまうはずだったのですが、模型を目一杯天井に近づけたり、イカの向きを工夫したりすることで、予定より腕の位置をかなり上げることができました!!!
こうして無事予定の展示場所に、大迫力のダイオウイカ模型と、生時の美しさを伝える映像、そして世界一小さなダイオウイカの標本の存在で、巨大な生き物の成長を感じられる、他にない魅力的な展示を実現することができたのです。
宮崎県総合博物館さま、かごしま水族館さま、NHKエンタープライズさま、夏島運輸さま、そして不思議博物館の角さま、本当にありがとうございました。
「えのすいの深海展」は来年の4月6日まで続きます。
ぜひともご来場ください!