2025年01月11日
トリーター:園山

関節が動く標本に

えのすいにはさまざまな標本類を展示しています。
標本の作成方法は、その対象の生物種や目的に応じてさまざまなものがあります。えのすいで展示している標本の多くは、チョウチンアンコウ、ラブカ、ミツクリザメなどの液浸標本、タカアシガニなどの乾燥標本などですが、液浸標本はホルマリンで処理した後にエタノール水溶液の中で保存してあります。また、甲殻類の乾燥標本は、関節は動かせないのと基本的に脆く、触るのには適していません。

タカアシガニの乾燥標本タカアシガニの乾燥標本チョウチンアンコウの液浸標本チョウチンアンコウの液浸標本

しかし、私たちトリーターは、ただ視覚だけで学び楽しんでいただくだけではなく、別の方法でも学び楽しんでいただけるように、日々試行錯誤しています。
例えば、現在開催中の「えのすいの深海展-ディープ度200%-」では、冷凍したミツクリザメなどの魚類やメンダコなどを直接触ることができます。またタッチプールでは現在、トラフグの歯、トラフザメの皮、乾燥したオオグソクムシなどの標本類を触ることができます。しかし、このタッチプールで触れるオオグソクムシは、先ほど述べたとおり乾燥しており、触ることに関しては背面を触るのみです。

深海生物の冷凍標本深海生物の冷凍標本

そこで、ちょっと時間をかけて関節が動く標本を作製しました。
そんな標本を作りたいなと思っていた矢先、タカアシガニが脱皮しました。これはチャンスと思い、さっそくグリセリンという薬品を用いて標本作製を行いました。グリセリンが浸透したのちに乾燥させると、関節が動く標本の完成です。このグリセリンを浸透させる標本の作成方法は、甲殻類以外にも海藻や甲虫類などさまざまな分類群で使われている方法です。
ただ、問題はタカアシガニの大きさ。全身が浸かるだけのグリセリンを用意しようとなると10リットル以上必要で、なかなか用意できません。表面からグリセリンをかけ、関節部分にはキッチンペーパーなどをグリセリンで湿らせ、常に関節がグリセリンで湿っている状態を維持しました。全身を漬けている訳では無いのでもういいのかな、まだかな、とようすを見ながらでしたが、何とか完成! と思いきや、一部グリセリンがうまく浸透しておらず乾燥している・・・!!
しまった、と思い再度グリセリンを浸透させ、完全ではないものの、ひとまず関節は動くようになりました。

他、ツブエゾイバラガニの脱皮殻や、オオグゾクムシの液浸標本もあったので、そちらもグリセリンを浸透させ、関節が動く標本に!

ツブエゾイバラガニの標本ツブエゾイバラガニの標本

えのすいの深海展スタートには間に合いませんでしたが、破損などが無い限りは深海展の期間に関わらず、これらの標本はえのすいのタッチプールで触れるようにしています。
気になる方はぜひお越しください!

完成した標本たち完成した標本たち

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