愛玩動物看護師の矢作です。
今回は、獣医師でもなく、飼育員でもない、水族館の「愛玩動物看護師」である私が、普段どんな仕事をしているのか、お話しします。
私たち医療チームは、“水族館にいるすべての生き物たちの健康を守る”仕事をしています。その多くは、お客さまから見えないところで行われることが多いのですが、こうした機会にご紹介できることをうれしく思います。
●定期検査予定の調整
こちらは、鯨類担当の羽田トリーターと来月の鯨類の定期検査予定の調整をしているところです。
現在当館で飼育している鯨類には、致死的な病気を予防するために、定期的にワクチン接種をおこなっています。
毎月、ワクチンの抗体価を測定する目的と、健康状態を確認する目的で採血を行います。また、採血の他にも、胃内視鏡検査やレントゲン検査など、時間や人手を要する検査についてはあらかじめ日時を決めて実施しています。
翌月の検査予定を早めに計画し、採血や採尿、採便など、ハズバンダリーでできる検査については、海獣類担当のトリーターたちにあらかじめスケジュールを提示することで、検査当日までにトレーニングを重ね、万全の準備をしてもらっています。
●投薬管理
生き物たちの日々の健康状態と、さまざまな検査結果に基づき、獣医師からはいろいろな薬が処方されます。投薬方法も、薬の種類や回数、緊急性などによって変わってきますが、最も頻繁に使われるのが経口投薬です。
錠剤や散剤、カプセル剤、液剤などが経口投薬にあたります。多くの場合、錠剤が最も扱いやすいですが、そもそも錠剤が無い薬や、流通の諸事情により、やむを得ず違う形状の代替薬を使用することもあります。
鯨類や鰭脚(ひれあし)類、ペンギンなどは魚を食べているので、餌の魚の鰓蓋(えらぶた)に薬を埋め込んで与えます。
散剤(粉薬)を与えなければならない場合は、一工夫必要になります。
今回、バンドウイルカの「サワ」に処方されたのは、「 1回 15gの粉薬を 1日 2回与える」という内容です。当館で使用しているカプセルは一番大きいもので 1カプセル 1g。 15カプセルを朝夕 2回の給餌の際に与えるのは、準備をするのも、魚に薬を詰めるのも、少し大変ということになりました。水に溶いて経口補液に混ぜたり、ゼラチンに混ぜてゼリーにして与えるという選択肢もありましたが、「サワ」の担当者と相談して採用されたのが、「オブラートに包んで与える」というものです。
私自身も、このやり方は初めての試みでしたが、準備も比較的簡単で、約 1週間続けていますが、「サワ」もスムーズに摂取してくれています。
医療チームのメンバー、新人獣医師の亀谷が、メディカルトレーナー堀内に作り方を伝授しているところです。
まずは手の水分をしっかり拭き取り、破れやすいので二重にしたオブラートに 5gずつ粉薬を入れます。
少量の水で角を折って、接着させます。(この時、唾液をペロッと付けたくなりますが、衛生上、きれいな水道水を使います!)
オブラートを破らず、コンパクトに包めたら完成です。
1回 15g与えなければいけないので、これを 1回 3個与えます。水分に弱いので、投与するギリギリまで専用の蓋つきの容器に入れてプールサイドに持っていきます。
給餌が始まったら、「サワ」の担当トリーターに渡し、魚と一緒に口の中に入れてもらいます。この時も、3個ともスムーズに飲み込んでくれました。
その時の生き物の状態や負担、手間、費用など、さまざまなことを考慮しながらより良い方法を提供するのも大事な仕事の一つです。
さて、2025年 2月16日は、第 3回愛玩動物看護師国家試験の日ですね。全国の受験生のみなさんが、ベストを尽くせますように。
おまけの一枚です。
羽田トリーターと真剣に話し合っている後ろから、写真に写り込もうとする誰かの気配を感じました。カメラフォルダを確認してみると…(笑)
北田トリーター、久しぶりのトリーター日誌登場でした♪