みなさんこんにちは、八巻です。
12月 28日から始まった「えのすいの深海展」。前回 に引き続き、深海展の裏側その2をお送りいたします。
前回はダイオウイカ展示にまつわるお話をお送りしました。今回も前回と同じ「未知だらけの深海」のコーナーの展示に関するお話です。
こちらのコーナーでは、私もキーメンバーとして関わらせていただいている深海洞窟探査プロジェクト D-ARK(D-ARK: Deep-sea Archaic Refugia in Karst)のアウトリーチを主な目的としたエリアです。
深海の洞窟なんて想像もつかない場所ですが、3年計画の1年目として、昨年5月から6月にかけて、JAMSTECの海底広域研究船「かいめい」で、各分類群の研究者の方々とともに本当に深海洞窟のある大東諸島で調査をおこない、たくさんの発見をしました。
現時点でダイトウヒメクマノアシツキ Flabelligena daitoensis という新種のゴカイ類が記載されている(記載論文:https://www.jstage.jst.go.jp/article/specdiv/29/2/29_SD24-17/_article/-char/ja)ほか、近々さらなる成果が論文として公表されます。
調査のようすはフィールド調査の 航海日誌として公開していますので、ぜひご覧ください。
この D-ARK コーナーの展示物として、同じ D-ARK のキーメンバーとなっている FullDepth さんから miniROV のモックアップ機を、いであさんからは深海内視鏡をお借りしました。やはり実際に使った機器やそれに近い機器を展示すると、迫力や存在感が段違いです。
これらを展示している洞窟の入り口を模した擬岩は、設営業者さんに実際の大東諸島の海底をみて作ってもらいました。色や質感、ひびの入り方など、かなりリアルに再現してくださいました!
ちなみに来年度使用する 新型 miniROV と深海内視鏡の名称募集 をおこなっています。ネットでも投票ができるので、ぜひご参加ください!
また、調査中に撮影した生き物や調査機器の映像は、D-ARK の代表機関である JAMSTEC さんに編集していただき、さらにはキーメンバーの琉球大学さんにも監修をしていただきました。
映像は全部見たら 30 分弱になりますが、どこから見てもきれいで面白い映像です!
深海にいることを忘れるかのような鮮明さには驚かされるばかりですし、登場する生き物たちも初めて目にするものばかりです。
そして実際に D-ARK 調査で採集してきた生物の生体展示です。調査終了、これまで深海Ⅰで展示していたアカサンゴスナギンチャク属の一種と、ワモンヤドカリ属の一種、ツノコシオリエビ属の一種も、この D-ARK コーナーで再デビューしました。小さな水槽になった分、近くでじっくりと観察できます。
さらには今回の D-ARK プロジェクト最大の目標であり夢でもある、いわゆる生きている化石の代名詞ともいえるシーラカンス、レプリカを、アクアマリンふくしまさんからお借りすることができました。
D-ARKはまさに「未知だらけの深海」で未発見の生物を探すという夢のようなプロジェクト。シーラカンス、あるいはもっともっと驚くような生物の発見があっても全く不思議ではありません。
そんなわくわくする心躍る調査が深海調査なんだ! という高揚感こそが、このコーナーで一番伝えたかったことなのです。
D-ARK 関連イベントは、先日 2月 2日(日)には miniROV の開発者、FullDepth の伊藤さんの講演と水中ドローンの操作体験をおこないました。
また 3月 2日(日)には、D-ARK の研究代表者でもある JAMSTEC の上席研究員の藤原さんの講演と「しんかい2000」の乗船体験( えのすい深海研究会 Vol.2 )、そして 3月 20日(祝・木)には 水中ドローン調査ライブ中継 を、D-ARKメンバーの方々に会場に来ていただき、一緒に海底を見たり解説してもらったりする予定です!
さらには来年度も D-ARK は続いていきます! みなさまもぜひ、D-ARK コーナーで「未知だらけの深海」や、そこに挑む技術者や研究者の方々の熱意、またその原動力ともいえる、湧き上がる好奇心や探求心を感じていただけたら幸いです。
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[ 2024年12月29日 深海展の裏側 その1 ]