みなさん こんにちは!
現在開催中の「えのすいの深海展」では、水中ドローンを用いた調査の成果をみなさんにご覧いただいています。私たちの一番身近なフィールドである相模湾にも、まだまだ分からないことがたくさんあります。特に、水深 100m ~ 1,000mというのは、スキューバで潜るには深すぎ、潜水調査船で潜るには浅すぎる、調査がしにくい海域で、JAMSTECの調査でようやく見ることができる世界でした。近年、水中ドローンを使うことで、当館でも今まで手付かずだったこの海域の調査をおこなうことができるようになり、79年ぶりのコトクラゲ再発見やメンダコ科の一種の発見につながりました。
これだけでもすごいことですが、先日おこなわれた熱海沖の調査で、われわれクラゲ担当が大興奮する生き物と出会うことができましたので、ご紹介します。
まずはその姿をご覧ください。
何だこれ~!
千切りしたにんじん?
いや、植物?
そんな風に思われた方もいるかもしれません。私も採集直後の写真が送られてきたとき、沖縄の郷土料理「にんじんしりしり」みたいだと思いました。
大きさはおよそ 40 cm! とても大きいです。
ではこの生き物の正体はいったい何でしょう…?
なんと、大きなヒドロ虫のポリプです。つまり、クラゲの仲間なのです。
茎のように見える部分が本来はもう少し長いので、おそらく全長 1m ほどになると思われます。世界最大級のポリプです。
今回は、このポリプをオオウミヒドラ科の一種として展示しています。私たちは、オオウミヒドラ科の中でも知名度の高いオトヒメノハナガサではないかと考えているのですが、実はこの仲間に関する情報がまだ少なく、ポリプだけでは属や種の同定がとても難しいのです。今回、水中ドローンでは実際に生息している環境の映像を撮影することができているので、今後研究者の方にお力添えいただきながら、種同定に挑戦していきます。
ちなみに、オトヒメノハナガサが日本で最初に発見されたのは相模湾で、なんと、125年前に記録されています。
オレンジ色の花が咲いているようで美しいです。
もしオトヒメノハナガサでなかったとしても、このサイズのポリプが珍しいことに変わりはありません。標本はもちろんのこと、生きた状態で見られることは世界的に見ても稀なことです。色や形がユニークできっと一度見たら忘れられないと思います。
もしみなさんがえのすいでこのポリプを見ることができたら、とてもラッキー!
ぜひ写真や動画をたくさんとってください。私たちトリーターが見逃してしまっている行動をもしかしたらみなさんが見ているかもしれません。さらにその記録は、貴重なデータにもなる可能性もあります! もしおもしろい行動を見かけたらぜひトリーターに教えてください。
夢か幻か! このポリプとの人生で一度の出会いかもしれませんので、じっくり観察していただけたらうれしいです。