2025年02月25日
トリーター:加登岡

サメな話Ⅴ

みなさんこんにちは! 最近サメについて日誌に書いてないなと思っていたので、半年ぶりに書いています。
現在、えのすいでは「えのすいの深海展-ディープ度200%-」を開催中です。それに合わせて今回は深海に生息するサメの紹介です。それがこちら。

写真で何ザメかわかりましたか? ノーヒントで分かればあなたはサメディープ度200%です!
何ザメか調べてみましょう!
まずこのサメは写真から臀鰭(しりびれ)が無いことがわかります。これで種類がだいぶ絞れていきます。
さらに歯の形状が上下で異なることや、その歯の形でも絞ることができます。

このサメは上の歯が細いキリ状で、下の歯は幅の広く主尖頭(しゅせんとう)は横に傾いています。
この形状で一気に絞れます。国内だとオンデンザメ科かオロシザメ科、ヨロイザメ科に絞ることができるのです。

さらに細かく口を見てみると、黄色矢印部分の上唇溝(じょうしんこう)が露出するかどうかで分類ができるのです。上唇溝が露出するのがオンデンザメ科で、露出しないのがオロシザメ科とヨロイザメ科になります。今回のサメは左側の写真のように溝が見られるので、オンデンザメ科と分かりました(右はヨロイザメ)。
このオンデンザメ科は日本に 6種確認されています。この 6種は背鰭(せびれ)付け根に棘(とげ)があるかどうかでさらに絞れます。

さあどうでしょうか? 棘は…ない
いやいや…ある!
見えますか? 小さすぎて分かりにくいのですが一応あります。アップにしてみましょう。

どうですか? ありますよね? それにしても写真だと分かりづらいですね。
これで 4種まで絞れます。この 4種の中でもこのサメは楯鱗(じゅんりん)が特徴的で、肉眼でもその楯鱗の感じが分かります。楯鱗の感じでマルバラユメザメとユメザメの 2種と絞れました。
では最後にこの 2種を比べてみてみましょう。

どっちがどっちでしょうか?
ぱっと見一緒に見えてしまいますが、違う種類です。
この 2種は体のパーツの割合などでも見分けられますが、一番簡単なのは腹部の隆起です。

上の写真は何もなく、下の写真は隆起しているのがわかるかと思います。隆起があるのが「ユメザメ」、隆起がないのが「マルバラユメザメ」です。
ということで冒頭の写真の答えは「マルバラユメザメ」でした。
この 2種は楯鱗の形状でも見分けることができます。この標本を手にいれる前からこの楯鱗が気になっていたので、顕微鏡でも観察してみました。

頭部の楯鱗を顕微鏡で確認したのですが、左のマルバラユメザメは筋のような隆起が無く、お皿のような形状です(倍率が異なりますがご了承ください)。一方右のユメザメは隆起があり、筋のようになっています。ユメザメも体側はマルバラユメザメのような形状の楯鱗ですが、頭部の楯鱗の形状が違うため、これでも見分けることが可能です。一応、肉眼でも頑張れば楯鱗の違いが分かります。

ディープなサメの紹介日誌になりましたが、このマルバラユメザメが深海生物冷凍標本タッチに登場中です。実物を間近で見て、触ることができちゃいます。
この冷凍標本タッチは不定期に触れる標本を変更していますので、マルバラユメザメを触るのであれば今がチャンスです。

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