メンダコチャレンジ 2024-2025 その1では、メンダコ飼育の難しさのお話をしました。
今回は、「えのすいの深海展」の開催に合わせての試み第 2弾! 「水中ドローンによる、メンダコ調査」です。
えのすいでは、株式会社FullDepth(以下FullDepth)と共同で相模湾の海洋調査をおこなっています。今回はその一環でおこなうメンダコチャレンジ2024-2025 です。
相模湾では底曳漁のように海底の生物を採集する漁がほとんどありません。そのため、海底の生物を採集する手段が少なく、メンダコについては過去にカニ籠漁で偶然入籠したという話があるくらいで、底曳漁のある駿河湾に比べて情報が格段に少ないのです。
我々はこれまで、メンダコがどんな状態でいることが良いのか、何を食べているのか、最適水温は何℃なのかなど、数少ない情報をもとに飼育をおこないながら、自然下でのようすを推測してきました。そうやって、過去のメンダコチャレンジをあれこれ書いてきました。
メンダコチャレンジ2024-2025 では最大潜航深度1,000mの水中ドローンを開発したFullDepthと一緒に本格的に相模湾でメンダコを探そうという調査をおこなっています。
水中ドローンで自然下のメンダコの姿を映像に収めて、生態の解明と長期飼育や繁殖に役立てることが主な目的で、可能であればスレ傷のないメンダコの捕獲もおこなおうというものです。
調査に使用した水中ドローンには、FullDepthの協力でJAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)の海洋調査でも使われているスラープガンという水中採集器が特別仕様で備えつけられてあります。このスラープガンは水中ポンプの力で生物を海水ごと吸い込もうというものです。
これまでの情報からメンダコが好むと考えられる場所を海底地形から割り出して探索をおこないます。実際には何処にいるかも分からない、手のひらサイズのメンダコをピンポイントで探すのですから、まさに手探り状態です。
そして、2024年12月、メンダコチャレンジ2024-2025を始めて記念すべき第 1回目の潜航。
なんとメンダコを発見してしまいました!!
エッ!?!?!?
しかも、そこは我々が予想だにしていなかった岩場でした。よく知られているメンダコとは形態的に違う種でありましたが、体を大きく広げてタコというより円盤のように岩と岩の間の礫(れき)の上でじっとしていました。危うく見過ごすところでした。
これが相模湾の海底で初めて我々が目にしたメンダコの仲間の姿でした。まさか最初の 1回目で見つけることができるとはびっくりです。これまでの運を全て使ってしまったような感じでした。
水中ドローンが近づくと驚いたのか、耳(ひれ)をパタパタさせて体全体一気に閉じて浮き上がると、そのまま泳いで移動を始めました。普段は泳がず、海底でじっとして、驚いたりすると泳いで、逃避行動をとるようです。スラープガンで採集することが叶い、飼育を試みましたが、残念ながら長期飼育までには至りませんでした。課題はまだ山積みです。
実は、今回採集したメンダコの仲間は種類がまだわかっていません。日本近海には 4種のメンダコの仲間がいることが知られていますが、今回の個体がどの種なのか遺伝子による解析予定です。
形態的にメンダコではありませんでしたので、オオメンダコ、センベイダコ、オオクラゲダコのうちのどれかか、、、もしかすると、、、第 5種目、、、などと考えてしまいます。
今回の調査では、メンダコの他にも初めて見るタコの仲間にも数体遭遇しています。頭足類は、まだまだ名前のない種類がたくさんいるといいますから、こちらの方も非常に貴重な情報です。また、珍しいと思っていた深海魚のシギウナギにも何度も遭遇(最初はまめちゃくちゃ興奮しました・・・が)し、その後の相模湾の調査ではいつのまにか“いつメン”になってしまいました。
とても身近な相模湾でも、まだまだ分かっていなことがたくさんありますし、これまで考えていたことが正解であったり、逆に違っていたりすることが、調査によって分かってきます。実はメンダコの調査の裏では、多くの発見や驚きがたくさんあるんです。
その後の調査では、メンダコに遭遇する機会はありませんが、今後も相模湾のメンダコ(と相模湾の海洋)の調査は続けていきます。
水中ドローンで集めた情報を元にメンダコの生態を解明して、一人でも多くのみなさんにメンダコのことをよく知ってもらいたいと思っています。
まだまだえのすいのメンダコチャレンジ2024-2025 に注目してください。