2025年04月14日
トリーター:北田

えのすい20周年~生き物たちへの感謝~

いつも“えのすい”を応援していただきましてありがとうございます。
20周年の締めくくりとして久々にトリーター日誌で登場いたしました展示飼育部の北田です。

20周年は、私の水族館人生としてはちょうど半分くらいなので、振り返りとこれから先を考えるちょうど良い年でもありました。

私の水族館人生、一番の思い出は海外調査になります。もともと環境の変化ですぐに体調を崩す私なので自ら海外旅行を計画することもなく、海外へは仕事目的100%でこの歳まできました。
深海調査においては2006年のインド洋航海で「しんかい6500」に乗船し、高密度の熱水生物群集を観察することができました。その後も無人探査機で深海の環境を見る機会はありましたが、やはり自分の目で見るという経験はその後の化学合成生態系飼育にいろいろ役立てることができました。

2006年 2月インド洋にて2006年 2月インド洋にて

クラゲ調査では2016年のフィリピン調査です。今もヒョウガライトヒキクラゲを時々展示していますが、このポリプは当時の私たちが持ち帰ってきたものです。
現地で子ども用プールを広げて簡易的な水槽を作り、採集したクラゲを複数入れて水中に舞うプラヌラを探して採取していました。こうスラスラ解説すると簡単に見えてしまいますが、この時もお腹の弱い私は一日海に入っては出てをくり返し、昼過ぎからスコールを浴びて冷えたお腹が暴れないように、とにかく体調管理も大変でした。

2016年 9月フィリピンにて2016年 9月フィリピンにて2016年 9月フィリピンにて「ヒョウガライトヒキクラゲ」2016年 9月フィリピンにて「ヒョウガライトヒキクラゲ」

最近では機器が良くなり無人で安全に環境を把握できるようにもなっていますが、いくつになっても自分で一生懸命動いて得た経験はずっと残るものです。遠く異国の地へ調査に行って目の前に目当ての生き物がいる時、何か道具が足りなくてもトリーターはそこで諦めたりしません。どんな状況でも何とかしようと考えて結果を残します。フィールドは館内で動いている時よりも何倍も学ぶことがありますし、学ぶというより動いている時に吸収するような感覚です。なので私たちは水族館を通じて自然を伝えようとしているのです。

“えのすい”がオープンした時から変わらない相模湾と太平洋というテーマ。環境が変われば展示も変わります。トリーターたちは、この変化を感じるセンサーを常にもち、今の相模湾をお伝えしています。
相模湾潜水調査や鯨類目視調査など図鑑やネットに載っていない今の相模湾をこれからも経験したトリーターから発信して参ります。
ダーウィンと同じ誕生日の北田から生き物たちへ感謝。次回は最終回、館長からです。

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