2025年04月13日
トリーター:鈴木

えのすい20周年 ~生き物たち、そして水族館への感謝~

みなさま、大変ご無沙汰しております。鈴木です。
トリーター日誌を書くのは、2022年 3月31日以来、約 3年ぶりになります。
20周年を締めくくるトリーター発信の企画として、羽田トリーターのバトンから始まった「生き物への感謝リレー」もいよいよ大詰めです。
それにしても、うちのチームのメンバーは本当に良いことを書きますね。日々感じてはいますが、改めてそれぞれの想いが詰まった文章に胸が熱くなります。

感謝したい生き物は数えきれません。
クラゲ(全般)、コウイカ、イイダコ、バンドウイルカ、カマイルカ、オタリア、ゴマフアザラシ、ウケグチメバル、イボダイ、キアンコウ、シビレエイ、キンメダイ、カマス(アカ、ミズ)、ソコイトヨリ、アカタチカマス、シイラ、フウセンウオ、ゴテンアナゴ(幼生)、ハモ、テングダイ、エソ、ギス、トラザメ(卵と赤ちゃん)、フジクジラ、シマガツオ、イシガキダイ、タカノハダイ、ホシエイ…。
どの生き物も、私自身の成長や、えのすいの前進に深く関わってくれました。名前を挙げるだけでも、鮮明に思い出がよみがえってきます。
それぞれに深いエピソードがあり、語り出すととても長くなるので今回はやめておきます…笑。そういえば、いつも日誌が長いと周りから言われていたことを思い出しました。

でも、やっぱり一番感謝したいのは、「水族館」という存在そのものです。
この想いについては、異動前に書いたトリーター日誌「水族館の飼育員を目指すみなさまへ」にもつづっていますので、よろしければそちらもご覧いただけたらうれしいです。
水族館は、幼少期からの夢であり道しるべで、いつでも私が進むべき道を照らし続けてくれた存在です。飼育員になってからも、そして今も、さらに大きな夢として私の人生の中で輝き続けています。水族館があったからこそ、迷うことなくこの道を進むことができ、さまざまな生き物たちやすばらしい人たちと出会うことができました。本当に、感謝の気持ちでいっぱいです。
もちろん、それができたのは、私を育て、今も昔も変わらず夢を応援してくれている両親や家族がいたからこそです(普段はなかなか言えませんが、この場を借りて感謝を伝えさせてください)。

“水族館”という言葉を聞くだけで、わくわくしてしまいます。
すいぞくかん、Aquarium、ひらがなでも英語でも、どちらもいいですね! かっこいい!笑
自分が水族館マニアだという自覚は……あります。
水族館の飼育員を目指し、大学 1年の夏に初めてえのすいで実習をさせていただいたとき、飼育だけにとどまらない水族館の多様な役割と奥深さを知り、その本当の面白さに気づきました。それまでの「水の生き物が好き」という気持ちが、「水族館が好き」へと変わった瞬間でした。
以来、全国の水族館巡りが趣味となり、訪れた園館はもうすぐ100館に届きそうです。
ただし、日本には細かく数えると150館近くの水族館があり、さらに毎年、規模の大小に関わらず新しい水族館がオープンしているので、全国制覇の道のりはまだまだ遠そうです。でも、それもまた楽しみのひとつですね。
日本の水族館は、それぞれに個性があって、本当に面白いですよ。いつか、その魅力についても書いてみたいです。

さて、ご報告がだいぶ遅くなりましたが、2年ほど飼育を離れていた後、昨年 4月より展示飼育チームに戻って参りました。現在は、現場で生き物と直接向き合うことは減りましたが、チーム全体を見る立場となり、人と向き合う時間が増えました。
飼育を離れていた 2年間は、今後の水族館人生において大きな財産になる経験や視点を得ることができました。長く飼育員として現場にいたからこそ、それを外から見たときに、初めて気づけたこと、新たに見えた景色がありました。「森の中にいれば木は見えても森全体は見えない」「逆に森しか見ていなければ一本一本の木の存在に気づけない」――まさにそのことば通りで、どちらの視点も必要で、大切だと強く実感できました。
最近は、仕事柄ということもありますが、良い木や植物を育てるには「良い土(=環境)」が一番大切だと感じています。また、多様な植物が育つためには、光を遮らないよう周りの木々の適度な剪定や、発育に合った器や土、植え替えのタイミングも重要です。中には、同じ土では連作障害を起こしてしまう種もあるので、輪作も必要……。このままだと止まらなくなってしまうので、このあたりでやめておきます。ちなみに最近、植物にハマっています。

冒頭で紹介した、以前のトリーター日誌に「回り道は高く飛ぶための助走」と書きましたが、やはりその考えは間違っていませんでした。
おかげで、壁を越えてまたひとつ夢に近づけましたし、さらに 3年前よりも高く、そして広く飛べるようになったことで、目指す夢もより大きく、色鮮やかになりました。
もちろん、その分、もっと高く飛ぶためにさらなる助走が必要になりましたが、夢を目指す楽しみもより強くなっています。

改めて、水族館を志して本当によかったと心から思います。そして、今でも変わらず、水族館が大好きです。
今は「人」と向き合うことが多くなりましたが、魚やクラゲ、イルカやアシカと同じように、「人」もとても魅力的で面白いです。日々、さまざまな局面があり、刺激にあふれ、学びの連続です。水族館でともに働くすべての「人(仲間)たち」にも、心からこの感謝の気持ちを伝えたいです。

飼育員の仕事は、生き物を通して人と関わるサービス業です。
すべての仕事は、「人(=お客さま)」に還元されてこそ、水族館の仕事になります。
飼育員に向いている性質は、「生き物が好き」である以上に、「人が好き」なことだと思います。良い飼育や展示をするためには、そこに関わる人たちが健康で、楽しく仕事をしていることが不可欠です。そして、その「人」を良い状態に保てるようにサポートすることは、生き物の飼育と同様に、良い水族館をつくるために最も重要なことです。
人に何かを伝えられるのはやっぱり人ですから、まず私たちが楽しんでいなければ、良いものはつくれませんし、お客さまの心を動かすこともできません。
そんな良い水族館づくりのキーパーソンである「人」に携われることは、とてもありがたいことですし、私のこの先の大きな夢を実現するためにも、必要不可欠なスキルだと感じています。

……やっぱり長くなってしまいましたが、これからも「水族館人」として、“えのすい”を、そして日本の水族館を盛り上げ、世界を牽引できる水族館づくりを目指していきたいと思っております! この先も新たなチャレンジを重ね、良い回り道をしながらたっぷりと助走をとって、より高く、より良い景色を見続けていきたいと思います。

みなさま、これからの水族館もどうぞ楽しみにしていてくださいね!

イシガキダイ「モノドン」のハズバンダリーイシガキダイ「モノドン」のハズバンダリーえのすい生まれのフウセンウオ初展示えのすい生まれのフウセンウオ初展示ジェルポリマーを使ったゴテンアナゴの展示ジェルポリマーを使ったゴテンアナゴの展示トリートメントで回復し、長期展示に至ったキアンコウトリートメントで回復し、長期展示に至ったキアンコウ沿岸水槽にてソコイトヨリ展示沿岸水槽にてソコイトヨリ展示深海Ⅰにて、トラザメの卵(発生のようす)展示深海Ⅰにて、トラザメの卵(発生のようす)展示冷たい海の水槽にてイボダイの単独複数展示 2015年本種におけるえのすい初の長期飼育展示から、トリートメント⇒展示といった現在の飼育の基盤ができました冷たい海の水槽にてイボダイの単独複数展示 2015年本種におけるえのすい初の長期飼育展示から、トリートメント⇒展示といった現在の飼育の基盤ができましたうおゴコロ、ホシエイの「オセロ」とうおゴコロ、ホシエイの「オセロ」とイルカショーきずな/kizunaにて、オタリア「マミ」とイルカショーきずな/kizunaにて、オタリア「マミ」とブリーディングプールにて、バンドウイルカ「シリアス」とブリーディングプールにて、バンドウイルカ「シリアス」と

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