水族館ではたくさんの生き物が生活をしています。 生きているということは、新しい命が生まれ、いつか命が失われていきます。 この仕事をしているとたくさんの喜びを感じることがあります。 また、悲しいこともたくさんありますが、生き物の美しさや力強さにパワーをもらいながら日々過ごしています。
今回は命が生まれ、それぞれが成長しているようすをお話しします。 自分が母親になってから、生き物たちの成長が我が子のように感じ、日々の成長がうれしくてたまりません。
まず、2025年 6月 1日に 13歳になったバンドウイルカの「サワ」。
「サワ」は、2012年 6月 1日、22時 26分にイルカショースタジアムのブリーディングプールで誕生しました。 初めてバンドウイルカの出産に立ち会うことができたのが、「サワ」が生まれたこの日でした。
尾びれが出始めてからトリーターたちで見守り続け、生まれた瞬間は「生まれた!」と声が上がったことを覚えています。 生まれたからと言ってすぐに安心できるわけではなく、しっかり呼吸かできているか、壁にぶつからずに泳げているか、授乳はしっかりできているかなど気にかけなければいけないことがたくさんあります。 基本的にはお母さんにお任せしますが、何かあったときはトリーターがサポートをします。
13歳になってもまだまだ甘えん坊の「サワ」はお母さんの「ルイ」が大好きで、いつも胸びれで「ルイ」の体をすりすりしているので、胸びれの前縁部分が白くなっているのが特徴です。
私のお気に入りの写真を1枚。小柄な体つきですが元気いっぱいの姿をこれからも見せてほしいです。
続いて、ゴマフアザラシの「ココア」。
2024年 4月 19日、“えのすい” で初めてゴマフアザラシの赤ちゃんが誕生しました。
生まれたては真っ白な毛をしていましたが、あっという間にゴマ柄になりました。
生まれたときの体重は 7.52kgでしたが、1歳の誕生日には 47.2kgまで大きくなりました。 離乳から魚を食べ始めるのも非常に早く、本当に手がかからずここまで大きくなりました。 どんどん新しいことができるようになり、最近はプールに入っているおもちゃで遊んだり、アクリル越しにお客さまと遊んだり、とても愛嬌のある動きを見せてくれます。
続いて、ミナミアメリカオットセイの「アトム」。
2024年 6月 16日、“えのすい” で初めてミナミアメリカオットセイの赤ちゃんが誕生しました。
生まれたときの体重は 4.48kgでしたが、1歳の誕生日には 15.1kgまで大きくなりました。 なかなかみなさんに会える機会が少ないですが、最近はお誕生日会でイルカショースタジアムまで行ったり、サブプール前までお散歩に行ってみたり、トリーター日誌でも「アトム」を見る機会が少しずつ増えてきました。 きのうのトレーニングでも、トリーターが廊下を走ると「アトム」も全速力で走っていました。
最後は、フンボルトペンギンのヒナです。「チョキ」と「ブラウン」の卵ですが、育ての親は「フク」と「マーチ」です。 まだ名前がついていません。 2025年 4月 19日に嘴打ち(はしうち)が始まり、4月 20日にふ化しました。
生まれたときは手のひらにちょこんと乗るサイズ 99.3g でしたが、現在は 4,160g まで成長しました。 これまで “えのすい” で生まれたペンギンの中でも一番成長が早く、ペンギンのヒナがこんなにも早いスピードで成長するなんて驚きです。
これは 5月15日に撮影した私のお気に入りの1枚です。 お腹のたぷっと感がたまりません。
6月 16日には初めてプールに入りました。 数日前から水面をのぞき込むような動きがあり、ちょっとずつ水に興味が出てきたね~ とみんなで話をしていました。
一度プールに入ると何度も入水と上陸を繰り返していました。 上陸する際、ほかのペンギンたちに突かれていましたが、そんなに気にすることなく何度も挑んでいく姿がとてもたくましく見えました。 柔らかい綿羽は抜け落ち、おとなと同じ羽になりました。 この羽になればもう泳いでも大丈夫! これからどんどん泳いで活発な姿を見せてくれるはずです。
これからも、“えのすい” で誕生していく命と向き合い、生き物たちが成長できるようにサポートしていきたいと思います。