2025年06月29日
トリーター:山本

えのすい生まれのカブトクラゲ

もちろん展示しているどのクラゲにも思い入れはあるのですが、現在クラゲサイエンスにいるカブトクラゲたちには一際の思い入れがあります。 なぜなら、私が育てた「えのすい生まれのカブトクラゲ」だからです。

実は、国内外の水族館や研究機関では、カブトクラゲやその仲間を繁殖させているところは結構あります。 しかし、“えのすい” では一度も成功したことがありませんでした。
もちろんこれまで何度か挑戦してきたのですが、思ったように卵や幼生を得ることができず、諦めて採集してきた個体を維持しながら展示を続けていました。
新年度になり、自分の目標を立てる中で「いい加減できるようにならねば…」と思い、改めて情報を集め再挑戦したところ、ようやく、よーうやく幼生を得ることができました!

当館のやり方はこんな感じ。 写真ように、5Lのビーカーに 5個体の親を入れておきます。 カブトクラゲは雌雄同体(雄でもあり雌でもある)なので、ビーカー内で受精が行われ、2日後には発生が進んだ幼生を得ることができます。


かわいい!! これが思っていたよりも小さくて! 1mmないくらいです。 もしかしたら、これまで幼生はいたけど見逃していたのかもしれません…。 小さな餌(シオミズツボワムシ)を与えつつ丁寧に換水をおこなっていると、だんだん大きくなってきました。

これが 2週間ほど経った姿。 大体 1cmくらいです。 これくらいになると、最初の時よりも大きな餌(アルテミア)を与え始めます。

これが 1か月ほど経った姿。 大体 2cmくらいです。 形も変わり、いっちょ前にカブトクラゲらしくなってきました。 水槽の壁に体が接触しないようにするために、絶妙な水流の調整が必要です。

そして来る 5月 5日。「兜」にちなんで、こどもの日に無事展示デビュー!! 全国(ほぼ)どこでも見られる超々普通種のカブトクラゲですが、自分で丁寧に育てた個体となると、いとおしさが別格です。

今では 4cmほどにまで成長し、立派にクラゲサイエンスで活躍してくれています。 ここまで来るのにいろいろコツ(水温・水質・餌・水流など)が必要であることがわかってきました。

カブトクラゲが繁殖できるようになったことで、自分の中での苦手意識もなくなり、他のクラゲの繁殖にも挑戦できるようになりました! この写真はカブトクラゲの近縁種である「キタカブトクラゲ」の繁殖個体です( 4mmくらい )。 まだ展示するには小さすぎるので、デビューを目指して引き続き育成していきます。

そして最近、次のステップとして「えのすい生まれのカブトクラゲたち」から卵をとることに挑戦しています。 カブトクラゲだけでなく、秋ごろにはチョウクラゲやツノクラゲ、オビクラゲなんかも出てくると思いますので、どんどん他のクラゲでも挑戦していこうと思っています!
ということで、今 クラゲサイエンスで展示しているのは私の思いがいっぱい詰まったカブトクラゲたちです。 ぜひじっくり観察してみてください。

クラゲサイエンス

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