みなさん こんにちは。
きょうは、みなさんにうれしいお知らせがあります!
現在、皇室ご一家の生物学ご研究 にてクコノミクラゲ Eutiara decorata を展示しています! 世界初展示です!
生きた姿で見ることができるのは大変貴重ですので、この機会にぜひご覧ください(短期間の展示になる場合があります)。
私はクコノミクラゲにとても思い入れがあります。
最初の出会いは、学生時代でした。 当時、エボシクラゲ科の分類に関する研究をおこなっており、先生から預かったサンプルの一つにこのクラゲの標本がありました。 初めて標本と写真を見せていただいた時、杏仁豆腐の上に乗っているあの赤い実だ! もうそれにしか見えない! と思いました。ただその当時は、どの資料を探しても種同定することができませんでした。
ある日、何気なく SNSを見ていたら見覚えのあるクラゲの写真が流れてきました。
「あ!杏仁豆腐の子だ!! 絶対そうだ!」
その記事は Eutiara decorata の新種記載に関するものでした。
私が調べていた時点では、未記載種だったということになります。 どこにも情報がないはずです!
もう少し早く調べていれば、新種として記載できたのかー! と、ちょっと悔しい気持ちもありましたが、記載論文を書くためには、たくさんの情報収集が必要になります。 正確な記述が求められますので、当時の私が持っていた情報では書くことはできませんでした。
その後、北里大学の三宅教授、水中写真家の峯水亮さんとともに沖縄県で採集された個体の日本初記録の報告をおこないました( Watabe et al. 2022 )。 先生方も納得してくださったので、杏仁豆腐の上に乗っているクコの実から、クコノミクラゲと名付けることになりました。 とても単純な理由ですが、見た目がイメージしやすい名前だと、誰かがまた見つけたときに情報を共有しやすくなると考えました。 もしかしたら、「杏仁豆腐の上に乗っている実にそっくりのクラゲ! 名前なんだっけ!」といった会話が繰り広げられるかもしれません。 そうなったらうれしいです。
今回、さらにうれしかったのは生きている姿を見ることができたということです。
以前は、峯水さんが野外で観察された情報をもとに報告を書きましたので、私は標本と写真しか見たことがありませんでした。 初めて水槽内で泳いでいるようすを見て、新たに気が付くこともありました。
実際に海に潜って生き物を観察することは、その生き物のことを知るうえで一番大事なことです。 水中で撮影された写真から、飼育のヒントを得ることもできます。 ただ、野外での観察はいつでも手軽にとはいきません。 先月、クコノミクラゲを探して沖縄でダイビングをしましたが、残念ながら出会うことはできませんでした(珍しい生き物にはたくさん出会いました!)。 しかし、飼育することでいつでも手軽に観察することができます。 今回は展示もおこなっているので、みなさんも世界初の行動を観察できるチャンスがあります。
ぜひ、観察しに来てくださいね!! 写真も撮ってもらえるとうれしいです。
今回クコノミクラゲを展示するにあたって、峯水写真事務所の峯水亮さん、兼城涼香さん、北里大学の徳武達也さんにご協力いただきました。 この場を借りて御礼申しあげます。