最近は暑すぎて、夏に厄介な印象があった蚊でさえも活動が鈍くなっている、なんて話を聞きます。でも逆に言えば、これから少し涼しくなってくるタイミングで蚊の活動が活発になるかもしれませんね。私は適度に寒い時が一番活発になります、獣医師の松田です。
さて話は蚊に戻りますが、この蚊、私たちにかゆみをもたらすだけでなく、ときに恐ろしい病気を媒介することのある昆虫でもあります。マラリアやデング熱などの名前を聞いたことのある方も多いかもしれません。そしてワンちゃんと一緒に暮らしている方は、「フィラリア症」という病気をご存じだと思います。
「フィラリア症」、つまり「犬糸状虫症」は、犬糸状虫という寄生虫の感染によって犬などの動物に引き起こされる病気です。感染した動物の血液中に存在する犬糸状虫の幼虫は、その動物が蚊に吸血された時にいっしょに取り込まれます。この蚊が他の動物を吸血する際、その刺し口から犬糸状虫が体内に入って感染します。犬糸状虫は最終的に心臓から肺に血液を送る通り道になる肺動脈にたどり着いて、心臓や肺だけでなく全身に病害を起こすことのある病気です。
犬糸状虫の発症を予防するため、ワンちゃんに予防薬を飲んでもらっている飼い主さんもいるかと思いますが、実は犬糸状虫はアシカやアザラシにも感染することがわかっています。
そのため、えのすいでも予防として、蚊と接触する可能性のあるアシカやアザラシに予防薬を飲んでもらっています。蚊が活動するシーズンに月 1回、ごはんの魚といっしょにゴクンです。ワンちゃんだと一回の薬の量は 1錠のことが多いかもしれませんが、特にオタリアの「ディラン」や「ヒミコ」、ゴマフアザラシの「オガ」などはからだが大きいため、必要な薬の量も多くなります。えのすいではその個体の体重に合わせて薬の量を計算し、毎月投与しています。もちろん、まだからだの小さい「アトム」にも薬を飲んでもらっていますよ!
ディランには 15.5錠分の予防薬を先月飲んでもらいました。
アトムが先月飲んだ予防薬は 1錠です。
これまで蚊や寄生虫の怖い話もしましたが、もちろん彼らも生態系に欠かせない役割を持っている重要な生き物でもあります。水族館でさえ、海獣たちのような大きな生き物から、よく目を凝らさないと見えないクラゲのポリプまで、さまざまな生き物がいます。そんな生態系の豊かさ、面白さをえのすいで感じてみてください。