2025年12月15日
トリーター:霜鳥

ヒメツリガネクラゲ

クラゲ担当で毎日おこなっている、江の島でのクラゲ採集。
3週間ほど前、良い潮の流れが入ってきたのか、普段は外洋で暮らしているクラゲたちが数日間続けてたくさん採集されることがありました。
日ごろ見慣れないクラゲたち(しかも小さなものが多い!)がとれたので、私にはぱっと名前が分からないものも多く… 、図鑑を何冊も引っ張ってきて同定を頑張りました。
いろいろと面白いクラゲがとれたのですが、今回は観察していて一番印象に残ったクラゲをご紹介しますね。

5mmほどの大きさの、ヒメツリガネクラゲというクラゲです。

ヒメツリガネクラゲはヒドロ虫綱 硬クラゲ目に属するクラゲです。
硬クラゲ目の仲間には外洋性のクラゲや深海性のクラゲが多く、通年展示することは難しいものがほとんどです。

私が初めて採集したヒメツリガネクラゲは、触手がすべて切れた、傘だけの状態のものでした。
なんだこの形は! と思ったのですが、透明で、角度によっては七色のようにも見えてとてもきれいで驚きました。
先輩トリーターに聞いてヒメツリガネクラゲと分かったのですが、すぐに触手を自切してしまうので、完全体で採集するのは難しいそうです。
でもここはやはり、図鑑に載っているような姿が見てみたい…!

そして数日後、またしても採集場所にクラゲがたくさんの日が!
しかも潮位が高く、数mmサイズのクラゲも目視で確認して おたまですくって採集できるほどの好条件でした。
(そんな状態を、私は勝手にクラゲバイキングと呼んでいます… 笑)
そこでちょうどきれいなヒメツリガネクラゲを1匹見つけ、丁寧に採集して無傷で持って帰ることができました!

さて、どんな動きをするのかと顕微鏡で見てみたら、触手の1本1本に神経が通っているかのようなゆらゆら感、そしてときおりしゅるんっと触手を縮めて口に運ぶような動きが独特で、とても面白かったです。
こんな風に触手の1本だけを目にも止まらぬ速さで縮めるクラゲは、そうそういないのではないでしょうか?
そして拍動した時には、まるで瞬間移動をするかのように素早く泳いでいってしまいます。

※少し画面が揺れますので、酔いやすい方はご注意ください。


普段からこのように海を漂い、餌をつかまえては食べているのだろうなと感じました。
ただ、私の目には捕まえている餌の正体は見えなかったので、よほど小さいか、餌に関係なく、反射的な動きなのでしょうか…?
気になってあとで論文を調べてみたら、ヒメツリガネクラゲは原生生物(アメーバやゾウリムシなどが属する生物群)を主食としているそうです。
クラゲの餌というと小型の甲殻類などの動物プランクトンをイメージしていたので、原生生物も積極的に食べるなんて、と驚きました。

自分で採集して調べて初めてクラゲの名前が分かり、そこから次は良い条件を意識して採集するようになり、クラゲ収集スキルは少しずつアップしていけている気がします。
このヒメツリガネクラゲは4日間ほどで触手がばらばらになってしまったのですが、また採集できたときには餌を与えてみたり、より良い環境で飼育もしていけたら良いな、と思っています。
ぜひこんなユニークなクラゲの姿を、“えのすい” にいらっしゃるお客さまにも見ていただきたい…!

冬場は外洋性のクラゲを多く観察・採集できるチャンスです。
生活史が分かっていない種類も多いので、見つけたときにはじっくり観察し、飼育のヒントを探っていけたらなと思います。

RSS