2010年04月23日

南西諸島海溝(4)No.4 深海調査航海での最大敵

  • 期間:2010年4月21日~5月5日
  • 場所:南西諸島海溝
  • 目的:深海生物調査
  • 担当:根本


浅海、深海を問わず、調査日程をメチャクチャにする憎き宿敵、“悪天候”がやってきました。
うねりや風が容赦なく貴重な調査日を削り取っていきます。
深海の調査航海では、運が悪いと、出港してもほとんど潜れずに帰ってくることもあるそうで、ひどい時には横須賀を出港し東京湾を出られず終わったこともあるとか・・・ 。
この日のためにコツコツと立ててきた計画をメチャクチャにする天敵です。そんな災いを防ぐためにJAMSTECの船ではほとんどの場合、出港後すぐに海の神様へのお祈りをします。
みんなで船のブリッジに集まり、神棚に祭られている海の神さまへお神酒を供え、海の安全と調査航海の成功を祈ります。
しかし、どういうわけか、この航海ではそのお祈りをしていません・・・ 。そのせいでしょうか。

さて、悪天候で潜航が中止になると一日フリーになります。
ここぞとばかりに遅れているサンプル処理や実験を朝からおこないます。
この航海では、ほとんどの研究者と学生は潜航終了後も夜中の2時3時まで実験をおこなっています。
それでもその日に採集したサンプルの処理や実験は終わりません。
きょうも朝から夜中まで、時化で傾く船上で研究者と学生が船酔いと格闘しつつ、一丸となって作業をいっていました。
私も採集された生物の世話をしつつ、生物の写真を撮っていました。
生物の撮影は乗船時の私の恒例行事となっています。
採集された生物は、基本的には冷凍保存またはアルコールやホルマリンに漬けられ、腐らない「標本」となります。
標本になると本来の色が消えてしまったり、生物の“生き物感”が無くなってしまいます。
本当ならば、“えのすい”の水槽で長期飼育を成功させ、その生きている時の魅力を表現したいのですが、飼育がうまくいかないものや、とっても小さくて水族館での飼育実験とその展示を断念する生物がたくさんいます。
そういう生物がすごくかっこよかったり、模様や色が美しかったりするのです。
「これを生かして持ち帰れないなんてもったいないな~、よし!とりあえず写真にだけにでも収めておこう!」
と思い写真を取り始めました。
今回の航海には、私の写真お師匠さんと言うべき研究者の藤原さんが乗船されています。
私が使っているカメラも、藤原さんが使っていた物を真似て買ったくらい影響を受けています。
藤原さんの脇で技を盗みつつ、小さな生物たちをせっせと撮影していました。
結局潜航が無くてもみんな深夜まで仕事です。
しかし、何にも邪魔されず打ち込める船上での作業は、たとえ夜遅くても楽しいものです♪

[きょうの写真]
上/宮古島の陰に避難
下/潜航できないハイパードルフィン

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC

(C)JAMSTEC(C)JAMSTEC


海洋研究開発機構(JAMSTEC)NT10-07「なつしま/ハイパードルフィン」による南西諸島海溝深海生物調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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