2013年04月08日

房総沖・相模湾初島沖(7)航海日誌 4月8日 7日目

  • 期間:2013年4月2日~2013年4月10日
  • 場所:房総沖・相模湾初島沖
  • 目的:船上飼育及び輸送方法の開発、シロウリガイ類などの化学合成生態系生物の化学合成生態系水槽における長期飼育及び行動観察
  • 担当:杉村


みなさん!こんにちは。

きょうは、きのうからの願いが通じたのか、無事潜航調査することができました。
風の影響が出れば中止となるような話でしたが、予想に反して天気は良く、波も穏やかでした。
なつしまの甲板から初島越しに富士山を眺めることができました。

さて、きょうの潜航は今までよりちょっと深く、水深 1000m付近から 850mまで海底を駆け上がる調査でした。
着底までは相変わらず牡丹雪のようなマリンスノーが降り、着底すると目の前には大きな岩が見え、崖になっていました。
そこからシロウリガイやヒバリガイ類のコロニーを探しながら駆け上がっていきます。
途中には、点在している岩の下からまるで植物のようにハオリムシの仲間が数匹ずつまとまって生えています。
相模湾のハオリムシの仲間も海底から湧き出る硫化水素を体内の共生菌によって、エネルギーに換えてもらって生きている化学合成生態系の生物です。
所々に生えるハオリムシの塊を見下ろしながら、シロウリガイのコロニーを探します。
見えてきたのは、岩の表面いっぱいに付着しているヒバリガイ類のコロニー、そして近くの海底にシロウリガイが見えてきました。
暗い海底に白い殻のシロウリガイのコロニーがよく目立ちます。
コロニーといっても貝殻も多く、その殻の隙間に生きているシロウリガイたち泥の中に深く突き刺さりながら、多くは縦に体を潜らせて水管を海底から伸ばしています。
シロウリガイは、みなさんのよく知るアサリやハマグリの様に泥に埋まって生活している貝なのです。
“えのすい”で昨年 153日生きたシロウリガイ(日本の飼育記録)も同じように泥の中に埋まって水管を出していました。
おそらくは、海底から湧き出るガスを体内に取り込もうと泥の中に体を埋めているのでしょう(シロウリガイもハオリムシと同じように体内の共生菌にガスをエネルギーに換えてもらって生きています)。
深海の生き物って、とても不思議で神秘的ですね。

きょうの潜航では、ちょっとした珍客も見られました。
体長が 7~ 8cmのドンコの仲間と思われる魚がダイブの途中からマニピュレーターの左肘の部分に、尾ヒレをピロピロ振りながらお腹の吸盤でぴったりくっつき、何度も腕を振って離れようとせずに、結局調査の最後まで数時間の間一緒に調査に参加してくれていました。
緊張感のある調査をほんのひとときではありますが、和ませてくれたかわいい珍客でした。

本日予定していたシロウリガイの調査も順調に終わり、ハイパードルフィンは浮上。
船上ではサンプルのソーティング(選別作業)を乗船者で一斉にあわただしくおこない、本日の調査は終了しました。
その後は、実験やら水槽の整理や換水など・・・それぞれの仕事へ散ります。
ちなみにきょうも午前さま・・・です。
ですが、ここ数日ダイブがなかったので久々の忙しさです。
大変ですが、ちょっと嬉しいです。
・ ・・いつもより、日誌もちょっと長いぞ・・・

ということで7日目が終わり、あしたでいよいよ調査最終日。
潜航できることを祈って、休みたいと思います。

では、また次回。

初島越しの富士山初島越しの富士山

ハイパードルフィン潜航開始ハイパードルフィン潜航開始

ハイパードルフィン揚収後の船上での慌ただしさ!!ハイパードルフィン揚収後の船上での慌ただしさ!!



海洋研究開発機構(JAMSTEC)NT13-07JAMSTEC「なつしま/ハイパードルフィン」による房総沖・相模湾初島沖調査航海

新江ノ島水族館は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究を行っています。

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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