2014年06月24日

青森県・姉沼(3)棚からぼた餅

  • 期間:2014年6月22日~2014年6月24日
  • 場所:青森県東北町・姉沼
  • 目的:沼の生物の調査・研究
  • 担当:伊藤
採集されたイシガイ類の稚貝採集されたイシガイ類の稚貝


みなさまこんにちは。

本日も朝から沼の中。引き続き調査を続けています。
コドラートの生物が入った網の中を見ていた時のことです。
指先に乗るほど小さいガラス細工のような貝を発見。
これってまさか、イシガイ類の稚貝!

種類は分かりませんが、おそらく今年生まれ。
繁殖時期から考えてカラスガイ、フネドブガイ、タガイのどれかでしょうか。
これまた快挙です。
実は、野外においてイシガイ類の稚貝が採集されることはほとんどありません。
「親貝がたくさんいる場所で探せばたくさんいるんじゃないの?」
と思われるでしょう。どっこい、そうはいかないのです。
貝の扱いに長けた人が生息地で必死に探しても、大きさ数センチの幼貝がやっと数個体見つかるだけ、というのがほとんどです。
専門家の間でも「親と全く異なる環境にいるのでは」「年によって繁殖しやすさが違うのでは」などの憶測が囁かれるほどです。

一度稚貝の形が分かってしまうと、学生さんたちは目を皿のようにして稚貝を探し始めました。


稚貝を探す学生さんと先生

最終的に 15個体以上の稚貝が採集されました。
つくづく、ここ姉沼が貝にとって理想的な繁殖環境であることを実感します。

さっそく、研究室に持ち帰って顕微鏡で観察します。
これは美しい!
殻の中で臓器が動く様子が精密な時計仕掛けのようです。
幼生の殻はすでに無くなっています。
足はすでに平たい形をしており、舌なめずりをするように動きます。
写真と動画をたくさん撮ってから、これも継続飼育することにしました。


顕微鏡で見た稚貝。
美しさにうっとりします。

イシガイ類の稚貝に関しては、データが本当に少なくて、ほとほと悩んでいたところでした。ですので、今回の調査は本当に実りあるものといえます。
これまでほとんど知られていなかった幼生期から稚貝期への成長のようすが大まかに見えてきました。
知られていなかったことが分かると、研究がさらに進みやすくなります。
例えば、稚貝の姿や動き、採集の状況が判明したことで、今後野外で探す時の模範となり、調査効率が上がることが期待されます。
今後さらにデータを整理して、詳細な報告ができればと考えております。

駆け足でしたが、これで今回の日誌を終わります。
ご拝読ありがとうございました。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

RSS