2017年02月28日

江の島海藻調査(3)人工海岸の海藻たち。

  • 期間:2017年2月28日(火)
  • 場所:江の島
  • 目的:江の島の潮間帯で見られる海藻相の把握
  • 担当:伊藤
ピリヒバの隙間にいるスガイの貝殻にはカイゴロモがもっふもふ。ピリヒバの隙間にいるスガイの貝殻にはカイゴロモがもっふもふ。


約 2週間ぶりの海藻調査です。
江の島は 2020年のオリンピック会場にも選ばれていますが、実は島の東側の多くは前回(1964年)の東京オリンピックの時に埋め立ててできた人工の土地です。漁業やレジャーの中心となるこちらでは、自然の岩場とはまた違った海藻が見られます。

まずは東側の港周辺です。
湘南港の一角にある漁港スロープ内には、大型海藻が少なく、アマノリやアオサ、サンゴのようなピリヒバがびっしりと生えていました。
あまり面白みがない中、その隙間にいる巻貝を見ると、貝殻をびっしりと緑色の藻類に覆われているものがあります。
その名もカイゴロモ。なんとあのマリモに近い種であり、スガイというただ一種の貝にのみ着生する興味深い海藻です。展示欲をそそられます。(写真 上)

スロープ上をよく見ると、漁網から取り外されたらしいゴミがとり残されており、そこには潮間帯には見られない深場の海藻であるユイキリの欠片がありました。
蛇腹のある肉厚な姿はテングサの仲間とは思えません。昨年初めて見た時はトサカ(サンゴの仲間)かと思ってしまいました。


海藻っぽくない?ユイキリの欠片

次に弁天橋の下へ行くと、橋脚にウシケノリが生えていました。昨年も今年も、この場所だけで見つけています。
他の護岸や岩場では何故見られないのか不思議な種でもあります。


橋脚のウシケノリ

足元には大量のゴミに混じってちらほらと海藻が打ち上がっています。
大きなカジメの残骸に混じって、少し珍しいオオバキントキやヒラクサが見られます。
他にもないかと手探りしていると、プリプリとした独特の手触り!
フクロツナギです。
当館の岩礁水槽で大量に自生している「雑草」海藻ですが、本来は深場の海藻で、野外で得たのは今回が初です。
どこから流されてきたかも不明なので、江の島の海藻とは言い切れませんが、嬉しい一品です。


フクロツナギ。持ち帰って押し葉標本にしました。

この時点で潮が満ち始めていましたが、北西端の岩場もぐるりとチェック。
水際にたなびく大量の海藻はほとんどハリガネ。当館の出会いの海水槽にも生えている赤くて細長い海藻です。
この場所は境川からの淡水の影響を受けて、塩分が低いためか、南の磯よりも一見して種類が少ないですが、本種はあまり影響を受けないのでしょうか。
一方で、昨年この場所だけで見られたイカノアシは、今回まったく見られませんでした。
江の島をタイプ産地(江の島で採取された標本を元に論文に報告され、種として認められた)とする海藻だけに、ぜひ再開したかったのですが。
とはいえまだ調査は終わっていません。次回の調査に期待したいところです。
お楽しみに?

相模湾ゾーン

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

RSS