みなさんこんにちは! 八巻です。
きのうに引き続き、調査 2日目です!
きのうは午後からやや荒れ模様となり、英虞湾(あごわん)へ避難、漂泊していました。今朝の出港は 7時頃、再びきょうの調査ポイントとなる熊野灘へ向かいます! きょうの調査は 1か所目でCTDとドレッジ、ビームトロールを曳き、その後移動してORIネットを 2か所で曳く予定です。
しかし、きょうはあいにくの曇天で、時折激しく雨が降る過酷なコンディションでのスタートです。
海上ではあたりを見回しても360度海しかありませんので、ずいぶん遠くまで見渡せます。一見近いように見えても何キロも先です。遠くで雲の下に雨がふっているのも容易に観察できてしまうのがすごいところで、天気予報も目で見てできてしまいます(笑
考えてみれば天気を視覚的にもダイレクトに感じることができるのは、洋上ならではの体験ですよね! 悪天候もそう考えれば楽しくなるというものです(笑
今回も登場する観測・採集方法について簡単に触れておきますね。
CTD(写真2):塩分、水温を水深と共に記録することで、それらの鉛直分布が分かります。通常CTDと複数本のニスキン採水器をケーブルで吊り下げて沈め、任意の水深で採水します。CTDのデータは海域ごとに微妙に違い、その海域のプロフィールのようなものですから、基本的に観測海域では必ず最初にCTD採水を実施します。勢水丸のCTDは、塩分、水温に加えてDO、クロロフィル濃度を測ることができ、溶存酸素濃度や植物プランクトン量を知ることもできます。
ドレッジ(写真3):海底の泥と泥の中にいる生物を採集します。入り口に金属の枠が付いた網を船で曳航します。金属の枠が海底をひっかいて泥と一緒にそこにいる生物が網に入ります。大体 5~10分くらい曳きますが、ときにはたった 5分でも網が泥や砂、岩で満載になります! 採集した泥の中から生き物だけを洗い出し、それを後から拾う、ソーティングという作業がとても大変ですが、さまざまな生き物を観察することができます!
ビームトロール(写真4):海底の表層にいる生物を採集します。ドレッジのように底を掘らず、滑るように底を曳いていきますので、ドレッジと比較して底質が入りづらいです。ですから、生物を生かして採集したい私たちにとっては底質につぶされない分、適した方法といえるかもしれません。
ORIネット(写真5):中深層にいる生物を採集します。いわゆるプランクトンネットが巨大化したものです。 1時間ほど曳いてプランクトンを採集します。クラゲ類やタルマワシなどが採集できます。プランクトン類は生かすことがとても難しいですが、ときにはチョウチンアンコウなども採集することができます!
1か所目では予定通りCTDとドレッジ、ビームトロールをおこないました。すべて水深300~400mほど。ドレッジは過去一といってもいいくらいのものすごい量の泥が取れました(写真6)!
サンプルがたくさんあるのはうれしいことですが、処理しきれなくては元も子もありません。全部はとても処理しきれませんので、全体の 1/3ほどをばんじゅうやバットにとり、洗い出しをして後ほどソーティングすることにしました(写真7)。
ビームトロールは前述のとおり、中の生物が泥にまかれない分、よりよい状態で採集でき、水族館に持ち帰るには向いています。ユメカサゴやオオコシオリエビ、ハシキンメ、ウデナガゴカクヒトデなど、駿河湾の底引き網や相模湾の水中ドローン調査でもよく見る生き物たちが採集できました(写真8)。
入っていたエビがほとんどヒゲナガエビだったのは、鹿児島でたくさん乗船したタカエビ漁やトントコ漁を思い出して懐かしかったです。これまでよく見てきた海、相模湾、駿河湾、鹿児島県沖東シナ海、鹿児島湾そして熊野灘、共通点を見つけてうれしくなりました! 海はつながっているということを改めて感じますね!
午後はORIネットです。きのうはドレッジ、ビームトロールともおこないましたが、ORIネットは今回が初です! 2か所でおこない、1回目が約1000m、2回目が約600mです。プランクトンは飼育が大変難しいですが、展示したい生き物たちです。私と渡部トリーターが前回乗船した豊潮丸航海のときに採集したクロカムリクラゲや、前回の勢水丸乗船のときに大内トリーター、渡部トリーターが採集してきたオオタルマワシも、このORIで採れた生き物です。
今回はというと…クロカムリクラゲが結構よい状態で採集できたほか、ヒオドシエビ、もちろんオオタルマワシも採集できました(写真9、10)!
私も日誌を書きつつ、使ったものを洗ったりして明日の下船の準備を進めます(写真15)。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
三重大学大学院生物資源学研究科 附属練習船「勢水丸」(三重大学)での北里大学海洋生命科学部の乗船実習