あっという間の1週間が過ぎ、豊潮丸は広島県呉港へ回航しています。
きのうが最後の調査だったので、きょうは乗船したみんなで、1週間お世話になった豊潮丸の掃除をします。
掃除機掛けやトイレ掃除は毎日おこなっていましたが、最終日はデッキの掃除をしたり救命胴衣、ヘルメットを洗って干したり少し特別感がありました。
お昼ごろには呉港に入港するので、あとは水族館へ搬入する生物を収容した水槽の換水をしたり、下船のときスムーズに荷物を運べるようにまとめたりします。
みなそれぞれ荷造りをしたり慌ただしくしていると、あっという間に呉港に帰ってきました。
いよいよ航海の終わりを実感し、しんみりとしていると、なぜか途端に雨が降ってきたので、どんどん船から荷物を降ろして今度はトラックに積んでいきます。
やや激しさを増した雨は、ちょうど荷下ろしが終わるころにすっと止みました。
初めての調査航海に、出発前はわくわくと緊張感が大きかったのですが、振り返ってみるととっても楽しく充実した航海でした。
今回の航海で体験することのどれもが新鮮で、貴重な経験となりました。
その中でも特に印象深いのは、やはり16、17日に実施した昭和硫黄島での潜水調査です。
1ダイブ目はうねる海面をまるでバウンドするように進むボート、潜れば腕の先が見えないほどの濁り、そんな状況下で初めてのメンバーで初めて潜る薩摩硫黄島。
どきどきしながらの潜水でしたが、海の中ではわくわくしっぱなしで時間が経つのがあっという間でした。
江の島では見られない生物、江の島と共通する生物、流されつつも普段とは違う環境を観察することができました。
続く2本目では本命の昭和硫黄島に潜水でき、水面から足元をのぞいただけでぷくぷくと湧き上がってくる気泡にとても興奮しました。
海底から湧き出る火山由来の温泉には硫化水素が含まれていているため、顔を近づけるとぴりぴりしてくるほど酸性の水質になっており、特殊な環境であることがまさに肌で感じられました。
17日の潜水調査でも無事に昭和硫黄島に潜水することができ、引き続きこの特殊な海底温泉に生息するタイワンホウキガニを観察しました。
周辺を見渡せば海底のいたるところから気泡が噴き出ていて、岩の隙間に隠れているであろうホウキガニを探しました。
岩の色と同化していて、はじめは探すのに苦戦しましたが潜水調査も二日目となれば少しは早く見つけられるようになりました。
そしてしばらく泳ぎ回って生物を観察していましたが、この海底温泉に生息しているのはホウキガニだけではありませんでした。
オキフエダイなどをはじめとする、相模湾でも見られるような魚種もいたので驚きました。
潜水調査は二日間で計4本潜りましたが、生物が実際に自然な環境で生きる姿を観察することの大事さを改めて感じました。
もちろん潜水調査だけでなく、各調査で出会った生物を通して、どんな環境にいるのかを体感でき、とても勉強になりました。
この経験を展示に活かしていけるよう頑張りたいと思います。
そして、今回は調査航海の中でいろんなことを杉村トリーターに教えてもらったので、次に乗船する機会があったら今回の経験を活かしててきぱき動けるようになりたいです。
さて、人間はみな下船し荷物もあらかた積み込みましたが、水槽とその中の生物は明日まで船に載せさせていただいています。
今夜は広島に滞在し、あしたの朝水槽の生物をトラック上のクーラーボックスへ積み込んだら、水族館まで長距離運転です。
水族館に帰るまでが航海と思い、最後まで気を引き締めて帰ります。
最後になりましたが、本調査航海を支えてくださった豊潮丸船員のみなさま、今回携わってくださったみなさま、ありがとうございました!!
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。