2025年02月07日

2024年 ウミガメ類のフィールド調査報告

    相模湾ウミガメ海岸漂着情報
    えのすいでは相模湾沿岸における野生動物の状況を知るために、フィールド活動を実施しています。その一環としてウミガメ類の漂着(ストランディング)、上陸、産卵状況について調べています。

    <ストランディング情報>
    ストランディング時は可能な限り、ストランディング個体の種、雌雄、標準直甲長、標準直甲幅、標識タグの有無を記録します。現場での病理解剖や個体の回収は、細菌等を飼育個体へ感染させないため、実施しておりません。

    2024年ストランディング記録2024年ストランディング記録


    2024年のストランディング状況は、当館に連絡のあった件数が17件、当館トリーターによる現場出動件数が 8件でした。

    連絡件数は当館に連絡があったものを限定すると、ここ数年に比べると若干の減少が見られました。2024年は新江ノ島水族館が提供を受けた以外にも、神奈川県におよそ100頭のストランディング情報があったようです。その内、産卵情報はありませんでした。

    種別ではアオウミガメが 1件、アカウミガメが 7件、クロウミガメが 1件、不明が 8件でした。

    クロウミガメは分類学的に混乱しており、アオウミガメとは別種とする説と、アオウミガメの亜種(別種とするほどではないが、区別ができる)とする説があります。一見するとよく似ていますが、形態的な特徴は、背甲の輪郭がハート型、色は黒色や暗い灰色、腹甲は灰色、首や四肢の付け根の腹面が灰色であることなどの特徴が知られています。
    主に東部太平洋に分布し、日本沿岸では 1998 年に八重山諸島で初めて確認されました。
    神奈川県では、2007年に由比が浜に死亡個体が打ち上げられたのがはじめてで、その後もまれではありますが、確認されています。

    <産卵調査>
    2024年の産卵調査はありませんでした。


    このフィールド活動は地域のみなさまからの通報を元に実施しています。
    ストランディングした個体は腐敗している可能性が非常に高く、飼育個体に感染する病原菌を保有している可能性もあることなどから、トリーターが積極的に現地に行くことは現状困難となっています。しかし、みなさまからいただいた貴重な情報は関係各所と協力し、有効に活用していきます。2024年も多くの方々のご協力を賜りましたこと、ここに厚く御礼申しあげます。

    また、昨年海水浴などをされている方がストランディング個体に集まり、素手で触れている事例がありました。ストランディング個体は腐敗している可能性が非常に高く、どんな病気を持っているのかも不明で衛生面でも危険です。ストランディング個体を確認しても近付くのはくれぐれもお控えください。

    浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

    触ってもいいの?

    どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

    “えのすい”はなにをするの?

    打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
    さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

    生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

    浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

    水族館で救護することはあるの?

    どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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