2025年03月27日

2024年 後期 希少淡水魚フィールド調査報告


    新江ノ島水族館・なぎさの体験学習館では、行政機関や市民団体により、希少淡水魚の保護や復元活動が行われている水域の生物調査に協力しています。後期も神奈川県内のミナミメダカの生息調査をはじめ、保護水域の整備や遺伝子の解析を行いました。また横浜市内の公園にある池の生物調査にも参加しました。

    前期の調査で、藤沢市境川水系のメダカ(愛称:藤沢メダカ)の生息数が激減していることが明らかになりました。この現状を踏まえ、市民団体や有識者の方々と今後の対策や方針を協議しました。この場所では以前より冬季に水深を浅くすることで低水温に弱い外来種のカダヤシを減らすことに成功しましたが、まだ生き残っているので、ミナミメダカの生息状況は依然として厳しいままです。そこで藤沢メダカの保護水域 Aではカダヤシと隔離するための保護区を作成し、ミナミメダカの繁殖を試みる方針となりました。
    保護区は廃棄地引網を幾重に折り畳み、池内にかかる遊覧デッキにくくりつけ、他のエリアと仕切りました。また水深が浅いため、池の一部を掘り下げ、越冬用に大型の蓮鉢を設置しました。保護区内の外来生物の除去や整備が整い次第、繁殖の検証を行いますが、来年度以降の保護区の定着に期待が高まります。
    小田原酒匂川水系のメダカの生息状況もまた停滞していました。本地点のミナミメダカは開発により生息地が徐々に縮小しています。市民団体の方のご厚意で私有地の水域 Aが保護区となっており、よく管理されていますが、別の保護水域Bは造成後に放置され、ミナミメダカが生息できる環境ではなくなっていました。そこで前期は、放置された保護水域 Bのごみ拾いや、深場の造成、雑草の除去などの再整備を行いました。後期はミナミメダカがこの保護水域を越冬地として利用しているかの検証を行う予定でしたが、残念ながら天候不良のため調査は中止となり、越冬地としての評価は不明です。また 3月に実施された保護水域 Aの調査では、土砂の堆積により昨年の同時期には数百尾確認されたミナミメダカが、百尾程度しか確認されず、除草や溜まった泥の除去など、継続的な整備が必要であることがわかりました。

    一度失った生態系を戻すためには非常に多くの労力が必要と身をもって痛感しました。自然を失う前に気付き、策を講じなければ、今ある生態系は次々に崩れてしまいます。そのためにも生物調査は必要不可欠であり、今の環境や生態系を知ることが自然環境を守ることに繋がっていきます。今後も生物調査に参加し、生物の現状を知り、環境を守るために貢献できればと思います。

    保護区整備保護区整備

    酒匂川水系のミナミメダカ酒匂川水系のミナミメダカ

    2024年度 後期

    8月24日(土)
    藤沢メダカ保護区整備(保護水域A)岩崎
    9月19日(木)
    小田原酒匂川水系のメダカ調査(保護水域A)近藤
    10月17日(木)
    三浦メダカ調査(保護水域B)近藤
    10月18日(金)
    藤沢メダカの学校をつくる会運営委員会 岩崎
    11月23日(土)
    三ツ池公園生物調査 大内
    1月24日(金)
    小田原酒匂川水系のメダカ調査(保護水域A)岩崎
    3月14日(金)
    小田原酒匂川水系のメダカ調査(保護水域A)大内
    3月22日(土)
    三浦メダカ調査(保護水域B)近藤

    浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

    触ってもいいの?

    どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

    “えのすい”はなにをするの?

    打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
    さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

    生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

    浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

    水族館で救護することはあるの?

    どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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