前回の御蔵島調査では生態調査が目的でしたが、今回は夏の特別企画展で使用するミナミバンドウイルカの水中映像撮影のため、御蔵島へ行ってきました!
メンバーは浦﨑トリーターと伊藤。
今回も東京都港区にある竹芝桟橋から「東海汽船橘丸」で向かいます。
出発は 22時半。仕事が終わってから急いでパッキングをして船へと乗り込みます。
外は真っ暗で目視調査もできないので、到着時刻まで就寝。
そして 6時に到着… という流れなのですが、海の状況が悪く、御蔵島着は欠航となってしまいました。
どうしよう! と思うかもしれませんが、実は乗船前から予報を確認したので、こうなることは視野にいれていた私たち。 既に半分準備してあった道具たちを持って、7時から目視調査開始です…! (ちゃんと乗車前に朝ごはんも購入済み。 欠航の準備は満タンでした。)
次の接岸チャレンジは 12時半だったので、それまでじっくりと御蔵島から八丈島までの海域を目視調査していきます。
デッキに出ると、私たちと同じようにカメラを構えて海を見つめている人たちがちらほら。 おそらく海鳥を撮っているようです。 その中で鯨類を探していくのは何だか気まずいですが、気にせずに調査をしていきます。
7時から 12時まで調査をし、結果は… 小型鯨類 1頭発見! 一瞬だったので種判別はできませんでしたが、目視することはできました!
そして 12時半、どきどきする着岸チャレンジ。 5月の着岸率は大体 7割なのですが… 。
結果は接岸成功!
御蔵島へと上陸し、14時からドルフィンスイム開始です。
さて今回は調査ではなく撮影が目的なので、持って行ったカメラは GoProと 360度カメラ。 360度カメラはその名の通り、360度を映すことができるカメラです。
きれいに撮るぞ…! と意気込んで海へと出ましたが、うねりも波もある状況で撮れるのか不安になりながらイルカを探していきます。
20分程船を走らせて群れを発見! 見つけるまでは浦﨑トリーターと 2人で、出会えなかったら大変だ、と震えていたのですが、何とか耐えることができました。
早速船を止めてもらい撮影開始だ、と海へ入った瞬間、海が濁りすぎていて驚きとともに不安が押し寄せてきました。 これ、撮影できているのか…? と。
海は 5m先が見えないぐらい濁っており、ミナミバンドウイルカの音は聞こえるけど、姿は見えない状況。 きょろきょろしながら探しているといきなり目の前に現れたりするので、撮影するのが大変でした。
御蔵島でのドルフィンスイムシーズンは 3月 15日から 11月 15日と決められています。
事業者さんによってスタート時期は異なりますが、今回お世話になった所では、私たちが今年初めてのお客さまだったそうです。
シーズンが始まったばかりで人間に慣れていないのか、昨年の 9月に行ったときとは違い、人間に興味津々でたくさん近くに来てくれました。 前はすーっと素通りしてしまう群れが多かった印象だったので、特別企画展の撮影には最適だったと思います。
9月は 9月で、子どものミナミバンドウイルカが多かったりなど、今回は違いも学ぶことができました。
360度カメラは途中で録画内容を確認できなかったり、18度という水温で最後の方にガタガタ震えだしたり、伊藤が船酔いで撃沈してしまったり…。 いろいろありましたが、とりあえずできる限りの撮影をして1日目は終了!
宿に戻って動画を確認すると、意外ときれいに映っていました! ただ、撮り方をもう少しこうした方がいい、ああした方がいい、という作戦会議をしながらあしたの準備をしていきます。
その会議は今回来ることができなかった花上トリーターとおこなっていたのですが、ここである問題が浮上していきます。
と言うのも、
4月30日:午後1回(到着した日)
5月01日:午前 午後2回
5月02日:午前 1回
の計4回、海に潜って撮影をし、2日の午後に帰る予定だったのですが… もしかしたらその船が悪天候の影響で出ないかもしれない、というものでした。
5月 3日から仕事があるので、予定通り帰れないと大問題! でも、早く帰るとなると1日の午後に帰ることになります。 そうなると残り1回しか撮影する機会がなくなってしまいます。
これはまずい状況です。 現地の方に船は出そうかどうか聞いてみると、風の向き的には出るかもしれないけど… と答えてくれましたが、もしもを考えれば帰る日を早めるのが賢明。 でもあと 1回で良い映像が撮れるのか… なんならイルカに会えない可能性だってあります。 映像も船の上では確認できません。
ど、どうすれば…! うわー!! と頭を悩ませ1時間。この時のことを今考えても頭が痛くなります。
そしていろいろ考えた結果、あと1回の撮影に命を懸ける…! と決意し、1日の午後に帰ることになりました。
さて、それでは命懸けの撮影、2日目がスタートです。
海に出てから比較的すぐにミナミバンドウイルカの群れを見つけることができました!
あとは映像を撮るだけ! と思っていたのですが、視界は相変わらず濁っており、群れがどこにいるのか分からない状態。
作戦会議で、海底に潜ってカメラを固定し定点撮影する。 という撮影方法になったのですが、視界にイルカが入ってから潜るのでは遅すぎてしまいます。
そのため、群れの少し前の方に潜って、待っているスタイルで撮影。 群れを逃がしてしまうこともありました。
ですが、浦﨑トリーターの活躍のお陰で何とか撮影することができました!
それではここでその映像をご覧ください。
… と言いたいところですが、それはぜひ、夏の特別企画展へ来ていただいて確認してみてください!!!
2回目のドルフィンスイムも無事に終わり、急いで帰る準備をして船に乗り込みます。一息ついたら、再度目視調査開始です!
昨年も、今回の復路でも大島周辺海域で鯨類を目視できているので、その辺りから目視調査を開始しました。 すると調査から30分後、小型鯨類を見つけることができました!
大慌てで浦﨑トリーターを呼び、写真と動画を撮ってみたのですが…
写真からも動画からも種を判別することはできませんでした。
残念です…。 ですが一番最後の画像を見てみてください。 面白いことに、私が見ている方向と真逆を映している浦﨑トリーターが分かると思います。 はい、これ実は、2群いて、それぞれ違う群れを見ていたんです。
鯨類を見つけた喜びを分かち合えていたようで、分かち合えていなかったようです。
なんとも面白い動画が撮れたので一部を共有させていただきました。
次はちゃんと種判別ができるように頑張りたい所存です。
さて、そんなことをしていると 20時ごろに東京都港区竹芝桟橋に到着しました!
海の状況に恵まれなかった今回の撮影でしたが、その中でもなんとか撮影することに成功できたと思います。 その映像は夏の特別企画展のどこかでみなさんへお届けできると思いますので、ぜひ楽しみにしていてください!
また次は調査として御蔵島へ行きたいと考えていますので、そのときはフィールド調査でお伝えしますね!
関連調査
[ 2024年09月04日 御蔵島鯨類調査 2024 ]
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。