2025年07月04日

D-ARK 航海 2025(2)
初潜航とヒドロ虫集め

  • 期間:2025年 7月 2日(水)〜 8月 3日(日)
  • 場所:九州・パラオ海嶺、大東島周辺海域
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは! 八巻です。
7月 3日、2日間の回航後、ついに駒橋第 2海山へ到着! 初潜航の日となりました!
今回調査する駒橋第 2海山は、地形調査によって得られたデータによると、北西から南東に向かって細長い海山で、山頂部は広く平頂になっています。ふもとは水深 2,300m - 2,500mほど、山頂部は水深 500mほど、高さ 2,000m前後です。

駒橋第 2海山の 3D地形図駒橋第 2海山の 3D地形図

今回の調査で最初に登場する調査機器は、「KM-ROV」です!

「KM-ROV」「KM-ROV」

いわゆる ROV( Remotely Operated Vehicle )と呼ばれる機器で、ケーブルを介して水中ロボット本体を操作します。えのすいで使用している水中ドローンの DU300 もこのタイプの水中ロボットです。
ROVは船上から操作できるため、今回のような大人数の航海でも、みなで映像を見ながら調査を進めることができるのが最大のメリットです。
今年の調査でも大活躍してくれることでしょう!

「KM-ROV」の調査映像を見る研究者の方々「KM-ROV」の調査映像を見る研究者の方々

早速始まった本航初潜航となる「KM-ROV」第 310潜航。
駒橋第 2海山の平頂部北西端の斜面を西から東へ、水深約 900 mから平頂部 500 mまでを上るルートで海底を観察することになりました。観察した生物をご紹介しましょう。

全体的に生物は少ない印象でしたが、潜航してすぐにバラムツを見ることができました!去年の航海時の釣獲調査でもたくさん釣れたバラムツでしたので、この駒橋第 2海山にもすんでいるとは思っていたものの、水中で見たのは初めてで興奮しました! 一見するとクロタチマス科とは思えない外見をしていますが、泳ぎ方や海底で見る雰囲気は他のクロタチカマス科に似ているようにも思えました。

バラムツバラムツ

最近の海山で大抵お目にかかれるセンジュエビ属の一種も健在でした。

センジュエビ属の一種センジュエビ属の一種

江の島沖で採集されることもある、見慣れたヌタウナギ属の一種。泥の中にもぐっているものと思っていましたので、岩の隙間から顔を出していたのは新鮮でした。

ヌタウナギ属の一種ヌタウナギ属の一種

他にトクササンゴなども見かけ、採集もおこないました。

トクササンゴトクササンゴ

翌日 7月 4日の調査 2日目は「KM-ROV」第 311潜航です。
今回はきのう潜った地点よりやや北西にずれ、平頂部から一段下がった平坦な山腹部水深約 900 mの地点を目指し、水深 1,300 m地点からアプローチしました。
前半は前日と似た生き物が少ない印象でしたが、終盤はヤギ類やカイメン類が多数観察できるなど、にぎやかな海底を見ることもできました!

ヤギ類やカイメン類が多数みられる海底ヤギ類やカイメン類が多数みられる海底

ほか、大きなイソギンチャク類、ウミテングタケ類を観察、採集しました。

イソギンチャク類イソギンチャク類

ウミテングタケ類ウミテングタケ類

ウミテングタケ類はポリプ(花のような触手)がよく伸びたようすからはどう見てもテングタケではありませんが、採集するとポリプが縮んで見えなくなり、キノコのような丸い外見になるそうです。

このように「KM-ROV」で潜航調査をする場合、朝から夕方まで、ほぼ一日観察・採集をおこないます。そして夕方サンプルとともに揚収された「KM-ROV」から乗船研究者全員で協力して生物、サンプルを回収して、各々の観察、処理に入ります。


採集生物の回収

さて、私はもちろん今回も展示用の生きた生物を採集・キープさせていただく予定ですが、今回の航海後は大きさ数cmの小さな生き物も展示する予定ですので、特に大きさはこだわらずに、いろいろと集めていこうと思っています。
そしてもう一つ、大きな目標があります。
実は私、この春から深海担当と併せてクラゲ担当することになりましたので、今回の調査は大きなチャンスと思っていました!
というのも、深海性のヒドロ虫類のポリプを集めることができるからです。私自身ヒドロ虫の分類は全く分かりませんが、ヒドロ虫のポリプを見分けることはできます。
ヒドロ虫は海底のあらゆる基質に付着していますので、石、ヤギ、カイメン、など採集したサンプルの表面を丁寧に観察すれば、たくさん出てくるはずです!
そんなポリプを集めて何が良いかというと、“クラゲが出てくるものもある”ことです。採集したポリプすべてからクラゲが出るわけではないと思いますが、今回、まずはヒドロ虫を集めて持ち帰ることが、クラゲを採集するという意味でも、私自身がクラゲ担当として成長するという意味においても、大きな目標です!!

さっそくこの 2潜航で、乗船している研究者の方々の協力も得ながら 6種類のヒドロ虫ポリプが手に入りました!
おすすめはこの黄色い群体と、オオキンヤギの枝の先についていた元気な群体です。


ヒドロ虫類


ヒドロ虫類

黄色い方は「ヒドロ根」や「走根」と呼ばれる根のような部分で岩の上をはいまわっていましたが、走根までは採集できなかったため、ヒドロ花、ヒドロ茎のみを採集、走根の復活を待ちます。

7月5日、7月6日も駒橋第 2海山で調査予定です!
外洋では朝夕の景色もとても美しいのです。
今回は日の丸のような夕日が見られました。


日の丸のような夕日


本プロジェクトは、日本財団の支援を受けて笹川平和財団海洋政策研究所が実施する「オーシャンショット研究助成事業」により助成を受けたものである。
オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。

・JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM25-06「かいめい」/「KM-ROV」 D-ARK 航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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