2025年07月06日

D-ARK 航海 2025(3)
ベイトカメラとクラムボン

  • 期間:2025年 7月 2日(水)〜 8月 3日(日)
  • 場所:九州・パラオ海嶺、大東島周辺海域
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは! 八巻です。
一時台風の影響により調査の継続が危ぶまれましたが、幸い天候は好転し、順調に調査が進んでいます。
7月 5日は「 KM-ROV 」の潜航と「ベイトカメラ」の設置。
7月 6日はベイトカメラの回収と「クラムボン」の潜航をおこないました。

序盤はどんどん新しい機器が登場しますので、機器ごとにご紹介しますね。

まずは「ベイトカメラ」です。
ベイトカメラは、自己浮上式の海底観察カメラに餌(ベイト)を取り付け、それに寄って来る生き物を観察しようという機器です。

ベイトカメラベイトカメラ

浮上の方法はいろいろありますが、このベイトカメラは搭載した音響機器に信号を送り、引っ掛けていた錘を投下して浮上させる、という方法です。
今回は 5日の夕方に駒橋第2海山の麓、水深 2,000m付近に 3台を設置して、翌 6日の 8時に浮上させ、回収しました。

ベイトカメラの回収ベイトカメラの回収

無事回収したカメラの映像は後ほどチェックをしますが、回収した直後はベイトカメラの餌と一緒に採集された生物の回収をおこないます。

餌と生物の回収餌と生物の回収

今回は、私の手のひらくらいの大きさの巨大ヨコエビがとれていました!

巨大ヨコエビ巨大ヨコエビ

深海には、カイコウオオソコエビやダイダラボッチなど巨大なヨコエビがすんでいることが知られますが、今回のヨコエビもそれらに近い仲間と思われます。 こんなヨコエビを飼育してみたいものですね!

次に「クラムボン」です。
クラムボンは「 KM-ROV 」よりも小型の ROVです。

クラムボンクラムボン

小型といっても大きなバイクくらいの大きさがあり、マニュピレーターやスラープガンも搭載していて、「 KM-ROV 」同様、海底で生物を採集することができます。 小型な分、海底が近く、生き物の観察が「 KM-ROV 」とは違った、より近い視点でおこなうことができるのも、クラムボンのよいところです。
今回は、駒橋第2海山の平頂部の観察と採集を主な目的として潜航しました。
海山の平頂部のようすは思ったより生き物が少ない印象です。

駒橋第2海山の平頂部駒橋第2海山の平頂部

その中でもよく目にしたのが、パラオヒメキチジと思われるヒメキチジの仲間です。

パラオヒメキチジパラオヒメキチジ

採集にもチャレンジし、成功しました!
パラオヒメキチジはその存在が知られていたものの、ヒメキチジ属の一種とされていて、2021年に新種として記載されました。 原記載地が九州・パラオ海嶺とのことで、今回の採集はとても意味深いです。 状態もよく、持ち帰ることができるように船上飼育を頑張ります!
他にもキホウボウ類やフサアンコウ類、アオメエソ類、を見ることができました。


キホウボウ類


フサアンコウ類

また、ヤドカリ類やコシオリエビ類などもいて、種は異なるものの、一見すると底引き網漁で観察できるような生き物たちとよく似ているような印象でした。
その後きれいな巻貝も採集、状態よくキープできていますので、こちらも種の同定をすすめ、展示できるように頑張ります。

巻貝類巻貝類


7月 5日は「 KM-ROV 」#312 潜航もおこない、駒橋第2海山の北東部、水深 1,000~800m付近の観察をおこないました。
生物が少ない印象の海底でしたが、大きなセキトリイワシ類や今回初めての観察となるイカ類が観察できました。


セキトリイワシ類

イカ類イカ類

さらに、採集生物をソーティングしているなかで、「ダイトウキノボリヒモムシ」というヒモムシのなかまが採集されました。

ダイトウキノボリヒモムシダイトウキノボリヒモムシ

こちらは昨年度の D-ARK 航海で大東諸島周辺海域採集され、新種として記載された生物になります!

ついにあすは駒橋第2海山の調査最終日、その後大東諸島方面へ向けて回航します。


本プロジェクトは、日本財団の支援を受けて笹川平和財団海洋政策研究所が実施する「オーシャンショット研究助成事業」により助成を受けたものである。
オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。

・JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM25-06「かいめい」/「KM-ROV」 D-ARK 航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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