2025年07月13日

D-ARK 航海 2025(6)
D-ARKでの「クラムボン」初登場と初の洞窟内探検

  • 期間:2025年 7月 2日(水)〜 8月 3日(日)
  • 場所:九州・パラオ海嶺、大東島周辺海域
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは! 八巻です。
無事船に戻ってくることができ、再び調査に参加することができることができて、とてもとてもうれしいです!
これからまだ調査は20日以上ありますので、改めて、気を引き締めて頑張っていきます!

7月12日
D-ARK調査となって初となる「クラムボン」の潜航、#49と#50をおこないました。
どちらも北大東島周辺での潜航で、#49は北東側の斜面を、#50は北西側の斜面を去年見つけた洞窟まで航走するというものです。

それぞれの潜航で生物や堆積物を採集しましたので、今回は「クラムボン」での採集についてご紹介しましょう。
「クラムボン」は「KM-ROV」ほど大型ではありませんが、サンプルを採集することができるスラープガンという機器を備えています。
スラープガンは水中掃除機のようなもので、サンプルを吸い取って、キャニスターと呼ばれる箱にサンプルを貯めて持ち帰ることができます。
クラムボンは前方のマニュピレーターでスラープガンの吸引ホースを握っていて、そのホースの口から生物を吸い込みます。

前方から見たクラムボンのホース前方から見たクラムボンのホース

クラムボンから見たスラープガンでの生物採集クラムボンから見たスラープガンでの生物採集

キャニスターはクラムボンの後ろの方についている四角い箱で、ホースはその箱に繋がっています。

中央のホースの奥にキャニスターがある中央のホースの奥にキャニスターがある

調査が終わったらそのままキャニスターを取り外し、そこから生き物や堆積物を取り出すことになります。

キャニスターを取り外すようすキャニスターを取り外すようす

生物を採集したキャニスター生物を採集したキャニスター

堆積物を採集したキャニスター堆積物を採集したキャニスター

小さな生き物や柔らかい生き物も吸うことができるので、今回も大いに活躍してくれることでしょう!

7月13日は今回の調査では初登場の新しい調査機器、Mini ROV「Tripod Finder2」の登場です!
「ドロシー」と言いたいところなのですが、ドロシーはもう少し調整が必要とのことで、今回は「Tripod Finder 2(TPF2)」で洞窟の探査を試みます!
「TPF2」は「KM-ROV」に搭載して、「KM-ROV」で洞窟の近くまで行き、そこから「TPF2」を発進させるかたちで使用します。

「KM-ROV」に搭載された「TPF2」「KM-ROV」に搭載された「TPF2」

実は昨年も同様にして「TPF2」を運用しました。昨年と変わった点はケーブルの長さで、昨年は 15mだったものが今年は 50mになります!! 昨年は入口の付近にしか入れなかった洞窟の奥まで入れるということで、一体何が待っているのか、わくわくが止まりません!
長くなったケーブルは、新しく追加されたドラムに巻かれていて、現場で伸ばして使います。

ケーブルが巻かれたドラムケーブルが巻かれたドラム

なお、今回ターゲットとする大きな深海洞窟は、昨年の調査で南北大東島にそれぞれひとつずつ見つかっています。私たちは南大東島の水深約390mにある方の洞窟を「ピッグ・ノーズ」、北大東島の水深約340mにある方の洞窟を「ラビリンス」と名付けました。

今回まず登場するのが「ラビリンス」です。「ラビリンス」は大きな割れ目が縦に二つはしっていて、奥に迷宮が続いているように見えることからこの名前をつけました。
さぁ、いよいよ「KM-ROV」#316潜航にて、「TPF2」で「ラビリンス」の探査開始です!

ラビリンスに向けて発進する「TPF2」ラビリンスに向けて発進する「TPF2」

実際に右の割れ目に入ってみると、すぐに左の割れ目につながる横穴があることが分かりました。そして割れ目はかなり奥の方まで続いていて、外からでは見えないところまで割れ目が続いています。

右の割れ目右の割れ目

奥の方に進んで行くと、橋のような構造が現れました。


右の割れ目の奥

そのさらに奥に行く前に、「TPF2」が「KM-ROV」に帰還できるか確かめようとした時、ドラムのケーブルが緩んでしまい、うまく巻けなくなってしまいました。

研究者も技術者もこの調査に合わせてさまざまな準備を進めてきますが、実際には現場に入ってみないとわからないことはたくさんあります。今回はドラムの巻取り繰り出しはせず、すでに出ている長さで運用して、明日はケーブルが緩まないように改善をすることになりました。トラブルも限られた材料と時間で解決していく、それも船の調査ならではのことといえるでしょう。

その後現状のケーブル長でできる洞窟観察を進め、「ラビリンス」最深部の謎解きは次の機会とし、探査初日は無事終了しました。

釣獲調査は順調。大きなヒレジロマンザイウオやバケアカムツ、オオグチイシチビキが釣れ、魚類分類学用の標本になりました。


ヒレジロマンザイウオ


鰭(うろこ)立てをするバケアカムツとオオクチイシビキ

一方で今回小さな甲殻類もとれてきています。深海生物の多くは小さな生き物ですので、これらを魅力的に展示できるようにしていきたいです。


コシオリエビ類1


コシオリエビ類2

最後に北大東島と青空をバックに、「TPF2」をかかえて潜航開始する「KM-ROV」です!


北大東島をバックに「TPF2」をかかえて潜航する「KM-ROV」


本プロジェクトは、日本財団の支援を受けて笹川平和財団海洋政策研究所が実施する「オーシャンショット研究助成事業」により助成を受けたものである。
オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。

・JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM25-06「かいめい」/「KM-ROV」 D-ARK 航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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