2025年07月22日

D-ARK 航海 2025(11)
ベイトトラップ回収、足摺沖へ

  • 期間:2025年 7月 2日(水)〜 8月 3日(日)
  • 場所:九州・パラオ海嶺、大東島周辺海域
  • 目的:深海石灰岩洞窟における遺存種の把握とその分類学的研究
  • 担当:八巻


みなさんこんにちは! 八巻です。
ついに大東島海域での調査が、一旦の最終日となってしまいました。

7月22日、午前中にベイトトラップの回収をおこなう「KM-ROV」#322 潜航をショートダイブでおこない、そのまま大東島海域を離脱、台風 8号を回避するため、高知県足摺岬沖へ向け回航となりました。

「KM―ROV」#322 潜航は、北大東島南西沖水深約1,900mでおこないました。主な目的はきのう投入したベイトトラップの回収ですが、これまで潜ったことのない海域のため、海底観察も兼ねて、少し離れた場所から、目標点となるベイトトラップの着底点へ向かいます。
なお、ベイトトラップには複数の音響発振器が取り付けてあり、水中でも正確に位置がわかるようになっているため、目標点とすることができます。

海底につくと、そこはさらさらのサンゴ砂で、ところどころに大きな石灰岩が転がっているという、ここ数日見てきた起伏にとんだダイナミックな海底とは打って変わって、静かな雰囲気でした。
実際目に見える生物量も少なく、時折魚が泳いでいく程度です。


サンゴ砂の静かな海底


これまでの起伏にとんだダイナミックな海底


泳いでいくアシロ類

しばらく行くと、今回の調査で最初からずっと探していたにもかかわらず、一度も確認できていなかったあの生き物がいました!!

ついにいた! あの生き物が!ついにいた! あの生き物が!

お分かりでしょうか。この砂から立っている棒のような羽のようなもの。羽ペンのようなその姿から、英語では“sea pen”と呼ばれるウミエラ類です!

ウミエラ類ウミエラ類

ウミエラ類は、これまでたくさん見てきたヤギ類などと同じ八放サンゴのなかまですが、砂や泥の中に体の一部を埋めていて、刺激を受けると砂の中に引っ込んでしまいます。案外深くまで埋まっていることが多く、我々人間が潜っての潜水採集でも、捕まえるのに難儀することもしばしば。
しかし今回はようやく見つけたこのウミエラを、何としても採集したい! ということで、20分くらいかけて掘り出し、採集に成功しました!
無事採集できた時は一際大きな拍手が沸き上がりました!

「KM-ROV」の画面のそばで採集の指示をするウミエラ研究者の方「KM-ROV」の画面のそばで採集の指示をするウミエラ研究者の方

さて、しばらく進むと、ありました! ベイトトラップです。

ベイトトラップが見えてきたベイトトラップが見えてきた

近づいてみると、イバラガニの仲間が何匹か集まっています…が…、トラップの中には 1匹も入っていないという想定外の事態でした!

ベイトトラップの周りにいるイバラガニ類ベイトトラップの周りにいるイバラガニ類

しかし、みな惜しいところにはいるのです。あと一歩、マニピュレーターで少しだけイバラガニ類の後押しをしてやりトラップの中へ追い込んだところ、無事トラップの中に入ってくれました!
採集完了です! その後「KM-ROV」でベイトトラップを回収、浮上しました。

ベイトトラップに入ったイバラガニ類ベイトトラップに入ったイバラガニ類

そして北大東島をバックに集合写真を撮り、この海域を後にしました。

北大東島をバックに集合写真を撮影北大東島をバックに集合写真を撮影

この22日間で飼育部屋となっている飼育コンテナもちらかり、低温室も生き物たちでいっぱいになっていました。しばしの回航と避泊は、飼育生物の世話や飼育コンテナの整理に充てたいと思います。
また大東島に戻って来られることを信じて、足摺沖を目指します!

飼育コンテナ飼育コンテナ

低温室低温室


本プロジェクトは、日本財団の支援を受けて笹川平和財団海洋政策研究所が実施する「オーシャンショット研究助成事業」により助成を受けたものである。
オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。

・JAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)KM25-06「かいめい」/「KM-ROV」 D-ARK 航海
・新江ノ島水族館は、JAMSTECと深海生物の長期飼育技術の開発に関する共同研究をおこなっています。

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

RSS