みなさんこんにちは! 八巻です。
航海は終盤に差し掛かり、調査日も残りわずかになりました。
台風の接近に伴う予定変更で当初の予定より調査ができる日程が減ってしまい、残るは 7月29日、30日の 2日間となりました。
7月29日は午前中に「クラムボン」#56 潜航、午後に「KM-ROV」#325 潜航の 2潜航を行いました。
「クラムボン」#56 潜航は、南伊豆南西沖水深約 930mから 880mまでの観察・採集を実施し、「KM-ROV」ではきのうと同じ、西伊豆東方沖水深約 750mから 670mまでの観察・採集を実施し、同時に「Cave Cam」を回収しました。
「クラムボン」#56潜航 では、久しぶりに見慣れた海底に戻ってきたように感じました。泥の底質に加え、相模湾でもよく見かけるイバラガニモドキやウルトラブンブクを複数個体観察したからです。
イバラガニモドキにはコンニャクウオ類がついていました。二宮沖でフジコンニャクウオに出会った時のことが懐かしいです。ここ駿河湾はフジコンニャクウオの本場ですが、見えたのが一瞬でしたので、フジコンニャクウオかどうかは、何ともいえないところです。
そろそろ浮上時間が迫ってきたころ、沈木が見つかりました。
やはり陸に囲まれた湾というだけあって、川から木が流れてくることも多いのでしょう。そして沈木にはなぜかいつもシンカイコシオリエビ類がついています。
飼育下でも水中ドローンで採集したシンカイコシオリエビ類が、沈木に寄り添う姿が観察されています。彼らは沈木やそれに付着する生物を食べていたり、あるいは沈木から滲み出る硫化水素を利用していたり、何らかのかたちで沈木に依存しているものと思われますが、その明確な理由は分かりません。
沈木はシンカイコシオリエビだけでなく、さまざまな生物に利用されていて、沈木の表面だけでなく内部にも多くの生物が潜んでいることがしばしばありますので、沈木ごと採集することにしました。
揚収されてみるとなかなかの長さの沈木です。
ただ、割ってみると沈木はまだ新しい状態で、内部の生物はあまりいなそうでした。
「KM-ROV」#325 潜航ではきのうと同じ西伊豆東方沖の海域に潜航、Cave Camを回収後、周囲を観察しました。
駿河湾のこの水深帯にはユメナマコがかなりの密度で観察できます。ユメナマコの発光を確かめるために、数個体サンプリングしながら進みます。
すると、ウラナイカジカの仲間がいました!
これはスラープガンで採集さえできれば、飼育下でも長く生きることがわかっていますので、ぜひ飼育用に採集したかったのですが、残念ながら「KM-ROV」のスラープガンのホース径より明らかに大きく、採集は断念せざるを得ませんでした。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
オーシャンショット研究助成事業は日本財団の助成を受けて笹川平和財団海洋政策研究所によって実施されている。