(山本)勢水丸航海ー! 私にとっては約 3年ぶりの乗船航海です。前回船酔いで結構ひどい目にあっており、緊張でここ数日胃の調子が悪かったのですが… ついにこの日が来てしまいました。毎年恒例なので詳しい説明は割愛させていただきますが、「勢水丸」は三重大学の所有する実習船です。今回の調査航海では北里大学、京都大学、神戸大学、パリ水族館、シンガポール水族館、そして私たち新江ノ島水族館が参加しており、参加人数はなんと 24人! 船内の教室もみちみちです。今回の調査航海でも、松阪港より深海生物を求めて三重県沖にある「熊野灘」を目指します。
調査の相棒は乗船経験豊富な渡部トリーター! 後輩に情けない姿を見せるわけにはいきません…! 船酔いに負けぬよう気合を入れて、いざ出船です!

出港したのは 10時ごろ。調査地に着くまでは少し時間がありますので、船内の設備の使い方や、緊急時のフローをチョッサー(一等航海士)さんからレクチャーしてもらいます。

そして私たちは調査で得られた生き物たちを生かすために、水槽や水温調整のための機械をセッティングしていきます。ありがたいことに、ここ数年で何度か勢水丸の航海に参加させていただいているため、何が必要でどう設営すればいいのか、そのあたりは手慣れてきたように思えます。
さて、準備もできたことですし、調査地に着くまで少し眠りに着こうかなー(すでに酔い気味)!
(渡部)あー! すでに山本トリーターが怪しい… 私は、今回で 4回目の調査航海です!少し船での過ごし方もわかってきたような? まだまだ元気です!! 今回は、さまざまな分野で活躍されている方々と一緒に船に乗ることができるので、わくわく胸を弾ませていました。調査海域には何時くらいに到着するのかなと思っていたら…
(山本)…そう、予定では熊野灘を目指していたのですが、なんと、今回も海が荒れてしまいまして… 全工程を通して、とうとう熊野灘にはたどり着けませんでした(大泣)。しかし天候は仕方なく、安全第一で最大限できることをやるしかない。計画の練り直しを話し合う先生方やチョッサーさんたちからもそんな気合を感じました。
ということで、一日目は遠州灘にて水深数十ⅿ の浅場で生物調査です! まずはドレッジとトロール。底層の生き物たちを中心に採集していきます。

上がってきた泥や砂利をかき分けて、生き物を探していきます。

学生のみなさんは乗船にとても慣れており、動きが素早い! 特に私がびっくりしたのは、砂利に付着したサンゴの存在です。こんな… ちょびっと付いているものを… よく見つけるな…。しかし、やってみると意外とたくさんいることに気が付きました。思っているより世界はサンゴであふれているのかも。

ベントス(底生生物)研究者のみなさんの研究用サンプルは確保しつつ、生かせそうなものは先ほどセットした水槽に収容していきます。
さて、お次は ORIネットでプランクトン(浮遊生物)の採集です。何か面白いクラゲは見られるかな?

(渡部)今回は約 30分間ネットをひく作業を 2回、ほぼ同じ海域でおこないました!ネットの中に入ったサンプルが温まらないように、バケツにペットボトル氷をいれて、その中にサンプルを入れていきます。まずは、元気そうな生き物をピックアップして、水槽へ入れる作戦をとりました。この方法は、以前表層の暖かい海水中にサンプルを入れたことが原因で、生きた状態で生き物をキープできなかったので、その時の経験を活かしています。今回はそこまで深い場所ではありませんでしたが、少しでも持ち帰れる可能性を高めていきます!

ひと通り、目についた大きめの生き物を水槽に移動したら、みなさんのソーティングに混ぜてもらいました。学生さんの研究に必要なサンプルを集めながら、さらに展示できそうな生き物を探していきました。ヤムシやカイアシ類など、さまざまなプランクトンを観察することができましたが、狙っていたような深海性のクラゲには出会うことができず… 残念。明日は海況がよくなりますように!
(山本)計 4回の採集で、いくつか生き物を活かすことができました。これで一日目の採集は終了です。夜ご飯を食べた後も、研究者のみなさんは夜中までサンプルをかき分けておりました。揺れる船の中であの作業ができるのは本当に本当にすごいです…。私は外で風に当たりたかったのもあり、停泊中に釣り調査をしてみたのですが、坊主。…あすに期待しましょう。
浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら
どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。
打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。
浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。
どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。
三重大学大学院生物資源学研究科 附属練習船「勢水丸」(三重大学)での北里大学海洋生命科学部の乗船実習