2025年11月06日

勢水丸 三重県沖生物採集航海(2)

  • 期間:2025年 11月 5日(水)~ 7日(金)
  • 場所:三重県沖(遠州灘)
  • 目的:ドレッジ、プランクトンネットによる生物調査
  • 担当:山本・渡部


(渡部)みなさんこんにちは! 勢水丸での航海 2日目です! 朝は 6時半に集合し、まずはみんなで船の中の掃除をしました。今回私たちは、デッキの掃除を担当しました。デッキとは、船員さんたちが船を操縦している場所です。外側から窓を拭いたり、掃除機をかけたり...私たちのために安全なルートで最善を尽くしてくださる船員さんたちが気持ちよく過ごせるよう、海外水族館勢と協力して、掃除しました!

さぁ 1日の始まりです! 朝食を食べ終えたら早速 ORI ネットでプランクトンの採集! きのうに引き続き、海況が悪いので、目的の場所とは別のところで調査をおこなうことになりました。残念…
とはいえ、きのうは陸に引き返すかも? なんて話もあったので、調査ができるだけでもうれしいことです! 最大限の調査ができるように調整してくださった、勢水丸のみなさまと先生方に感謝です。さっそく、ソーティング開始!

みんなで、手分けをして生き物を分けていきます。この間に、ドレッジやトロールもおこなわれており、船内はプランクトン組、ベントス組に分かれて作業を進めていきました。乗船経験が豊富な学生さんや先生方ばかりでしたので、とてもスムーズです。揺れる船内でのソーティングは、夢中になっていると気にならないのですが、ふとしたときに船に乗っていることを思い出して、辛くなります… 涙
山本さん、元気ですか?

(山本)ダイジョウブデス(遠い目)。今回あまりクラゲが採れなかったため、私は少し考えを切り替えて、他の生物を集めてみることにしました。ヤムシやサルパの仲間、ゾウクラゲなどの「クラゲじゃない」生き物たち。沿岸でもクラゲ採集をしていると、クラゲに交じって普通に手に入る生き物たちですが、今回沖でネットに入ったものたちはサイズが大きく、どれも見ごたえがあります。

こうして標本にしておけば、いつでも展示や解説に使うことができそうです。

(渡部)そうこうしているうちに、お昼の時間がやってきました。山本トリーターは、きのうからほとんどご飯を食べることができていないようすです。船での食事をとても楽しみにしていたのに、この時間は私もほとんど食事に手をつけることができませんでした…

(山本)ああ 揺れているううう… ときどき波が船底に当たって「ドーン、ドーーン」と音を立てています。サンプルが上がってきた時など、動かなければならない重要な時間に動けるように、タイミングを見計らって眠りにつきます。同じように船で酔う方はうなずいてくれると思うのですが、いったん意識を失うと、頭がすっきりしてしばらく動くことができるのです…!

(渡部)つらそうです… ! でも、2人ともなんとかダウンせずに、頑張っています! 最後の ORI ネットは、水深 300 m まで降ろしてもらえることになりました。期待が高まります。深海生物らしい生き物は、あまり多くはありませんでしたが、タルマワシの仲間には出会うことができました。今回採集した全ての個体が 5mm ほど。かなり小さいです! 拡大してみてみると…

オスは、目の上あたりにうさぎの耳のような突起があり、メスに比べてかなり小さいことが特徴です。これまでの航海では、3cm ほどのメスを中心に採集してきましたが、今回メスはいませんでした。深海性のクラゲなどの大きな生物が少なく、より小さい生物が目につきやすかったので、今回はいままでよりも多くのオスを見つけることができました。ちなみにオスはほとんどタルに入っていません。種同定が必要な個体もいたので、持ち帰って調べてみます。

さて、今回のサンプリングはすべて終了です。
湾内に入ってからは、揺れも落ち着いてきたので、ソーティングを続ける研究者、採集した生き物を顕微鏡で観察する海外水族館勢など各々作業をおこないました。

私たちは、あす、えのすいへ生き物たちを持ち帰るための準備を進めました。生物の種類を大まかに分けてのラベリングや、写真撮影などをおこないました。今回は目的の水深ではなかったのですが、初めて出会う生き物も多く、とても興味深かったです。特に面白いと思った 2種類を紹介します!

発光バクテリアを持っているという噂を聞き、発光生物の研究をしている学生さんからブラックライトをお借りして、光を当ててみました。口の部分(緑色になっているところ)だけ、蛍光が見られました! 光がはっきり見える個体もいれば、そうでない個体もいました。近くにいた先生方や学生さんと、餌を集めるのに効果があるのかな? と盛り上がりました。

体にクラゲのポリプがついていました。ヤセオコゼの仲間は、体にヒドロ虫類のポリプが寄生していることが知られています。写真にははっきりと映りませんでしたが、胸びれの根本あたりにポリプの塊がついていました。

(山本)私はきのうのリベンジで再び夜に釣り調査をおこないました。そして!釣れました! かわいいサイズのスズキとコトヒキ。超超普通種ですが、自分の考えで釣れた魚は格別です。かっこいい!



パリ水族館の Etienneさんもコトヒキをゲット! なんと、パリ水族館でもコトヒキが展示されているそうですよ。

船上で過ごす時間はあっという間でした! いよいよあすは、生き物たちとえのすいへ帰ります!


三重大学大学院生物資源学研究科 附属練習船「勢水丸」(三重大学)での北里大学海洋生命科学部の乗船実習

浜で打ち上がっている野生動物をみつけたら

触ってもいいの?

どんな病気を持っているかわからないので、触らないようにしてください。

“えのすい”はなにをするの?

打ち上がった動物の種類や大きさ、性別などを調査しています。
さらに、種類によっては博物館や大学などと協力して、どんな病気を持っているのか、胃の中身を調べ何を食べていたのか、などの情報を集める研究をしています。

生きたまま打ち上がった生き物はどうなるの?

浜から沖の方へ戻したり、船で沖へ運んで放流するなど、自然にかえすことを第一優先にしています。

水族館で救護することはあるの?

どんな病気を持っているのかわからないので、隔離できる場所がある場合は救護することがあります。しかし、隔離する場所がない場合、さらに弱っていてそのまま野生にかえせないと判断した場合は、他の水族館や博物館と連携して救護することもあります。

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