2009年05月08日
トリーター:石川

ペンギンは 1日にどれくらい行動しているのか?


今回は野生ペンギンたちが日頃どれくらいの距離を行動しているかお話しましょう。

ペンギンは鳥の仲間ですが、鳥の移動行動としてまず頭に浮かぶのが“渡り”ではないでしょうか。
この時期はぞくぞくと日本へ夏鳥たちがやってきています。
その筆頭はみなさんご存知のツバメ。寒い冬は日本から 2000Kmも離れたフィリピン、ベトナム、インドネシアなどで越冬し、繁殖のために春先から日本へ渡ってきます。
逆に日本で越冬したカモ類たちを代表とする冬鳥は、繁殖のために北のシベリアなどへ渡っていきました。

このほかに、私たちの身近には一年中見られるスズメなどに代表される、いわゆる渡りをしない鳥がいます。
日本では留(とどまる)鳥と書いて“留鳥(りゅうちょう)”と呼ばれる鳥たちです。
世界で約 9000種いる鳥のうち、渡りをしない種類は約 5000種いるといわれています。
ペンギンたちはどちらかといえばこの留鳥にあたる種類がほとんどのようです。

ではその一日の行動範囲はどうでしょうか?
まずは巣から海までの歩く距離ですが、ペンギンの種類によってもいろいろです。
海岸からほど近い場所に巣を作るものから、1Km以上はなれたところに巣を作るものもいます。
エンペラーペンギンにいたっては、海まで 50km~ 100km(東京から江の島が約50km、東京から熱海が約 100km)離れた場所にコロニーがあります。
エンペラーペンギンは別として、仮に海から約 1kmとすると、“えのすい”から直線で江の島の灯台までが約 1km。起伏がないとしてもあそこまでペンギンの歩幅で歩いてようやく海へ出れるのです。
次に餌をとりに行く距離ですが、これも種類によって差がありますし、棲んでいる環境でも違います。
海岸からすぐの海に豊富な餌があれば遠くへ行かずにすみますが、海岸から 20km、50km泳いでいくもの、数日かけて数百km餌をとりに行く場合もあります。
ここでも仮に 20km泳いで行くとすると、直線距離で三浦半島の先、三崎あたりになります。
毎日あの体でこれだけの距離を移動し、魚を捕まえるときは相当な瞬発力も使い、時にサメやアシカやシャチから逃れながら生きているのが普段のペンギンの行動なのです。

ちなみにペンギンのなかで唯一渡りをするといわれているのが、マゼランペンギンという種類で南米の南の沿岸に広く生活し、高緯度(南極に近い)な地域で繁殖し、冬には北へ約 1000km(東京~小笠原間くらい)泳いで移動します。
大西洋側ではブラジル南方、太平洋側だとペルーの南方辺りで採餌行動をおこなっているそうです。
鳥の仲間で泳いで渡りをするのは、マゼランペンギンとモグリウミツバメの 2種類だけが今のところ観察されている種類のようです。

小さな体でのんびりしているようですが、その行動力はたいしたものですね。

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