みなさんこんにちは! 新人獣医の松田です。
今回はレントゲン検査のお話です。
みなさんも骨折や肺炎の検査のとき、レントゲン検査を行ったことがあるかと思います。
レントゲン検査はX線という特殊な電磁波を使った検査で、X線の通過のしやすさを画像に反映させることで、体の内部を可視化することができます。細かく説明すると難しくなってしまうのですが、とっても簡単に言ってしまえば、「骨などの組織は白く、空気などは黒く、水や臓器などはその中間くらいの色で画像上に映る」です。
そんなレントゲン検査ですが、私たち人間のような哺乳類だけでなく、魚類に対しても実施できるのです。
今回はクルマダイという魚のレントゲン検査を行いました。
検査を行った理由としては、「他のクルマダイと違う異常遊泳が見られた」ためです。
クルマダイを含む多くの種類の魚は、遊泳時に浮力調節を行うための「鰾(うきぶくろ)」という臓器を持っています。この鰾から空気が漏れてしまったり、何らかの理由で他の場所に空気が入ってしまったりすると、うまくバランスが取れなくなっておかしな泳ぎ方になってしまうことがあります。今回は異常行動の原因を探るための検査です。
上の写真は今回のレントゲン検査のようすです。レントゲン画像を撮影するときに動いてしまうと画像がブレてしまうため、まず、水を張ったバケツの中でクルマダイに麻酔をかけます。その後水から出して、X線を受け取って画像にするカセッテ(手前に見える黒い板のようなもの)の上に乗せ、撮影を行います。もちろん魚は陸上では呼吸できないため、素早く撮影して水に戻します。
こちらが今回撮影したレントゲン画像です。
1枚目が異常遊泳をしていたクルマダイ、2枚目が比較のために撮影した普通の泳ぎ方のクルマダイです。
1枚目と2枚目で、体の中央の黒く見える部分の大きさが違うことがわかります。この部分がおそらく空気が入っているうきぶくろの部分で、異常遊泳をしていたクルマダイは何らかの理由でうきぶくろが大きくなったか位置がずれてしまったのではないかと考えられました。
このクルマダイについては、体に浮きを装着して浮力を調整し、正常な泳ぎ方にすることで余計な体力の消耗を抑え、うきぶくろ内の空気のバランスを元に戻そうという治療を行いました。
過去に同様の症例で成功例のあった方法ではありましたが、残念ながら今回は亡くなってしまいました。
魚類を担当しているトリーターは魚の病気や治療に詳しい方が多く、私はまだまだ教わることばかりです。水族館での医療と言えば、イルカやアシカなどのいわゆる「海獣」の治療が中心と思われがちですが、魚たちの治療に対しても情熱をもって取り組んでいる人たちがいます。それがわかる過去のトリーター日誌も残っています(2019年05月09日 魚のケガって治るんですよ!!)。
このことを、今回のトリーター日誌で少しでも知ってもらえればとてもうれしいです。