
4月 5日より、深海Ⅰの標本コーナー(リュウグウノツカイとかが展示されていたところ)をリニューアルしました!みなさまもうご覧いただけましたでしょうか。さまざまなトラブル(?)を乗り越え、ようやくお披露目することができました!


こちらは展示開始前日の設営のようす。各チームと協力して、安全かつかっこいい展示になりました。ここ数か月みんなで頑張って準備をしてきましたので、ぜひ紹介させてください。
今回の展示では、近年おこなっている水中ドローンでの調査や乗船航海で採集された「深海性のクラゲたち」にフォーカスしており、貴重な標本に加えて、生きているときの姿も映像でご覧いただけるようになっています。
そのなかでも私が特に注目して頂きたいのが、右上にちょこんとある「ホムラツノガサクラゲ」と、真ん中にどーんとある「オトヒメノハナガサ属の一種」です。

ホムラツノガサクラゲは、今年の 2月に 相模湾産の日本初記録種として私たちが名前を付けたクラゲ です。今回展示している標本は、論文を執筆する際、いつもお世話になっている黒潮生物研究所の戸篠さんと一緒にいろいろと観察した、日本で唯一の特別な個体です。そのため、ホムラツノガサクラゲ自体は当然日本初展示となります!ただ、標本化に伴い、特徴的な口柄の赤色が抜けてしまっており、大きさや形しかわからなくなってしまいました…。隣のモニターで生きているときの映像を流しておりますので、標本と一緒にご覧いただければうれしいです。もし次に海で出会えたときは、みなさまに生体をご覧いただけるよう準備しておきます!

続いて、オトヒメノハナガサ属の一種。オトヒメノハナガサ( Branchiocerianthus imperator )は、ヒドロ虫綱 花クラゲ目 オオウミヒドラ科に属するクラゲの仲間で、最大で 1m 以上になるため「世界最大級のポリプ」と呼ばれています。クラゲのポリプは数 ㎜ であることがほとんどなので、この仲間は私たちクラゲ担当でも驚くレベルの大きさです。
実はえのすいでも過去に 「オオウミヒドラ科の一種」として(こちらの個体は結局「オトヒメノハナガサ」でした!)展示 をしたことがあるのですが、飼育がかなり難しく、短期間の展示となってしまいました。
今回展示しているオトヒメノハナガサ属の一種( Branchiocerianthus sp. )は、そのときに展示していたものとは別の個体で、私の恩師である日本大学生物資源科学部の荒教授(左)と、江の島の漁師である湯浅さん(右)(源春丸の「源さん」)から寄贈していただきました。

2025年 1月、江の島沖で環境調査をされていた荒先生から「海で変なものがとれた。生き物かもよく分からない」と連絡があり、受け取りに行きました(ダッシュで!!)。すると、鮮やかなオレンジ色をした巨大な綿毛? のようなものでした。

最初見たときは全然よくわからなかったのですが、よく見てみると見覚えのある構造…これってもしかして巨大なクラゲのポリプ…? ということはオトヒメノハナガサ…?
残念ながら展示ができる状態ではなかったのですが、急いで持ち帰り、研究用に薬品で固定しました。

定規と見比べていただくと、その大きさがお分かりいただけるかと思います。そして黒潮生物研究所の戸篠さんに遺伝子解析をしていただいた結果、オトヒメノハナガサとは遺伝子的に少し違うということが分かりました。そのため、今回の展示では本標本を「オトヒメノハナガサ属の一種」としています。
この仲間は普段海底に生息しているので、おそらく海が荒れたり他の生き物がぶつかったりしたことで根元からちぎれ、海面に浮きあがったところを、偶然、荒先生たちによって拾われ、しかもクラゲを担当している私の元にたどり着いた… のだと思います。これはもう運命としか思えません。ということで、気合を入れて展示を作成しました!
この標本を展示するために特別な水槽を作り、アガー(植物性凝固剤)を使ってほんのり海水を固めつつ、過去に水中ドローンで見た「生きている姿」をイメージしながら、いい感じに整えてみました。海で拾われてからすでに 1年以上が経過しているため、やはり色は抜けてしまっているのですが、おそらく世界的に見ても、この規模、この形でオトヒメノハナガサの仲間の標本を展示した例はほとんどないのでは! と思っています。ぜひ世界最大級のポリプの迫力を感じていただければと思います!
さてこの標本コーナーですが、まだ完成しておりません。
というのも、よりかっこよくするために特注の棚を入れたことによって、上の方の標本が観察しづらくなってしまったのです…。設計時の見通しが甘かったとすごくすごく反省しております。他にも文字の大きさやライティング、オトヒメノハナガサ属の標本が思ったよりも濁ってしまった…(これはこれでいい感じ?)などなど、改良の余地が…。今後可能な限り見やすくなるようにしていきますので、お待ちいただければと思います。
それとは別で、調査をおこなうたびに映像を追加したり、面白いクラゲが採れた際には展示する標本を入れ替えたりと、このコーナーでいろいろやってみようと思っていますので、変化もいっしょにお楽しみいただけたらうれしいです!
当館は水族館ですので、まずは「生きている姿」をみなさまに見ていただけるよう、これからも最大限の努力はしていきます。しかし、残念ながら、すべての生き物を寿命まで生かすことは難しいです。標本展示は、そんな飼育の難しい生き物でも、長期間見ていただくことのできる大切な展示手法だと思っています。
当館にお越しの際はぜひ、今回リニューアルした標本展示をご覧いただき、深海のクラゲたちに思いを馳せていただけたらうれしいです!