2026年06月06日
トリーター:山本

タイヘイヨウアオミノウミウシ( Glaucilla marginata )の魅力

6月 4日から、クラゲサイエンスでは「タイヘイヨウアオミノウミウシ( Glaucilla marginata )」を展示しています! なんやかんやでここ数年(いつも短期間ではありますが…)毎年展示しており、すっかりお馴染みの存在となりました。近縁の「アオミノウミウシ( Glaucus atlanticus )」とよく似ており、間違えられがちですが、別の種類のウミウシです。世界的にも飼育された記録が少なく、最初はどうすればいいのか全く分からずでした…。しかし、ここ数年の飼育経験から、タイヘイヨウアオミノウミウシについてもようやくいろいろなことが分かってきましたので、ここでまとめて紹介させていただきます。
アオミノウミウシやタイヘイヨウアオミノウミウシについて、これまでの日誌もあわせて見ていただけたらとってもうれしいです!!
一円玉サイズの戦い」(2021年 7月26日)
アオミノウミウシ(Glaucus atlanticus)の魅力」(2023年 9月 9日)
青い天使は悪魔の手を持つ」(2025年 3月26日)

はじめに、タイヘイヨウアオミノウミウシの見つけ方から。えのすいの近くの砂浜では、春から秋ごろにかけて強い南風が吹くと、いろいろなものが打ちあがります。

こんな感じで波打ち際に漂流物が打ちあがっていればチャンスです! ちなみに、この漂流物が「川由来」の水草などの時よりも、「海由来」の海藻などの時の方が採集できる可能性は高まると感じています…! 打ちあがった漂流物に沿って歩きながら、ひたすら目を凝らして探します。とにかく小さいので、いると思って探さないと見つからないかもしれません。

いました! 拾うときは直接手で触らず、おたまなどで砂ごとすくって海水に入れてあげましょう。体感ですが、このあたりではアオミノウミウシよりもタイヘイヨウアオミノウミウシの方が打ちあがることが多い気がします。餌生物であるギンカクラゲが打ちあがっていた時は大チャンスです。ぜひその近くを探してみてください!

次に、アオミノウミウシとの見分け方。これは育てないとわからないのですが、最大サイズが全然違います。アオミノウミウシは最大で 3cmくらいになりますが、タイヘイヨウアオミノウミウシは 1cmくらいです。しかし、これだけでは小さなアオミノウミウシとは見分けられません。そこで、注目してほしいのはミノの部分。

ミノの長さが規則的な感じで一面に並んでいればアオミノウミウシ、3次元的に伸びて長さも不規則な感じであればタイヘイヨウアオミノウミウシです。これさえ知っていれば、サイズを問わずにこの 2種を見分けることができます。

これは?… ミノが 3次元的に伸びて不規則な感じなので、タイヘイヨウアオミノウミウシですね。正面から見ると分かりやすいです。

次に、タイヘイヨウアオミノウミウシの飼育方法について。

えのすいでは、基本的にアオミノウミウシと同じ方法で飼育をおこなっており、最長で42日間の飼育ができています。ボールに 5Lくらいの海水を入れ、エアレーションをして軽く水の流れを作りながら、水温は20℃くらいで維持します(水替えは 1日に 2回)。本種もアオミノウミウシと同様に共食いをしてしまうため、エアチューブで小部屋を作って各個体が接触しないようにすることで、一つの容器で飼育をおこなうことができます。
餌は、砂浜で大体一緒に採集される「ギンカクラゲ」を基本的に与えています。食べるようすを観察していると「カツオノエボシ」や「カツオノカンムリ」に比べて、ギンカクラゲは明らかに食いつきがいいですね。毒の強さなのか食感なのか、食べやすさみたいなものがあるようです。そして、ギンカクラゲがいなければ解凍した生シラス(湘南名物!)を与えています。サイズが小さいので、シラスをかなり小さくちぎってあげなければなりません。ちょっと大変です。
本種の生活史はいまだ解明されておらず、繁殖が確立されているわけではないのですが、飼育しているなかでは交尾行動や産卵行動、卵から発生した幼生の確認もできています。

本種はアオミノウミウシと同じように雌雄同体であり、成熟個体同士を近づけるとすぐに交尾をします。その後はさやえんどうみたいな形の卵塊(長さ 3mmくらい)を産み、その中でそれぞれの卵が育っていくようです。一つの卵塊には15個前後の卵が連なります。


ウミウシの幼生は「ベリジャー」と呼ばれ、はじめはみんな貝殻を持っています。孵化後はしばらく浮遊生活を送る(この時の浮遊生活の仕方で 3つのタイプに分けられています)のですが、ミノウミウシ類の場合はそこから餌となる生物に付着し、貝殻を脱ぎ捨て、さらに発生が進むことが知られています。

このベリジャー幼生を育てられればいいのですが…相変わらずここから先には進めていません。しかし、昔ほどお手上げ状態でもないので、今後もいろいろ試してみようと思います。

この日誌を書きながら「なんかアオミノウミウシと内容ほとんど一緒だなぁ」と思いましたが、それもこれも、今までいろいろ試して情報を積み重ねてきたからこそいえることですよね! 今展示しているタイヘイヨウアオミノウミウシは 6月 2日から飼育を始めていますので、うまくいけばあと一か月くらいは展示が続けられるんじゃないかと思います。この機会にぜひご覧ください!

クラゲサイエンス

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