2026年07月16日
トリーター:渡部

1か月が経ちました!

みなさんこんにちは!
今、深海Ⅰの研究室の小窓の水槽では、オオタルマワシを展示しています。NトリーターとSトリーターが 勢水丸 に乗船して採集し、えのすいへ持ち帰ってきた個体です! 7月15日で、展示を始めて1か月が経ちました。
乗船採集では、必ずと言っていいほど見ることができるオオタルマワシ。 初めて見た時に、「何だこの変な生き物は!」と驚いた記憶があります。 でもよく見てみると透明な体はかっこよく、謎多き生態は魅力的! 多くの深海生物の図鑑に「深海のエイリアン」といったキャッチフレーズと共に紹介されていますが、生きている姿を見ることはなかなかできません。

そこで、かっこいいオオタルマワシの姿をみなさんにも見ていただきたい! という想いから、何度かオオタルマワシの飼育に挑戦し、輸送から飼育方法まで模索してきました。
今回は、これまでのオオタルマワシの飼育を通して、わかってきたことをご紹介します。

オオタルマワシの体はワックス(油のようなもの)でコーティングされているので、一度水面に浮いてしまうと沈むことができません。
このことは、過去の日誌( オオタルマワシの赤ちゃん )でもお話しています。

そこで、容器を密閉し、オオタルマワシが動き回って水面へ上がってきてしまったとしても、また水中に戻れるようにしました。 密閉といっても、特別な道具は使っていません。サンプル瓶の海水をいっぱいにして、きっちり蓋をするだけです。 採集された海域の水温に合わせてサンプル瓶を冷却することで、1週間ほどの航海でも状態良く持ち帰れるようになりました。 ちなみに今回は 10℃で飼育しています。

オオタルマワシを飼育している蓋つきのサンプル瓶オオタルマワシを飼育している蓋つきのサンプル瓶


通常、生物を飼育する場合、水中に酸素を供給するためにエアレーションが必要になります。 みなさんも水の生き物を飼育する時、エアーポンプを必ず準備すると思います。
しかし、オオタルマワシは酸素が非常に少ない酸素極小層と呼ばれる水深帯でくらしています。 そのため容器を密閉し、またエアレーションを入れなくても、オオタルマワシは簡単には酸欠にならないのです。 むしろ、エアレーションをいれることで、その気泡がオオタルマワシの体にまとわりついて水面に浮いてしまう原因になります。
水族館へ搬入した後も、サンプル瓶のまま飼育します。 輸送に使用した容器がそのまま飼育容器になるのでとても便利です。

ここからは飼育方法のご紹介!
餌は、カツオノエボシにも給餌している 当館おなじみ冷凍生シラスです!
ピンセットで口の前に持っていくと、つかんで食べます。 ただ、オオタルマワシが勢いよく泳いだ時に落としてしまうことがあるので、シラスをぎゅっとつかんでいるか何度かチェックします。


オオタルマワシは、シラスをとっても上手に食べます。 なんと、あの小さくて細いシラスの身の部分は全部きれいに食べて、骨だけ残すのです。
以前、飼育していた個体も同じように食べていたので、もしかしたら海の中で小さな稚魚を食べているのかもしれません。 ただ、私たちと同じく、きっと海ではさまざまなものを食べていると考えられます。 以前飼育していた個体には、シラスだけを給餌していましたが、脱皮不良になることがありました。 そのことを研究者の方に相談したところ、オオタルマワシは甲殻類なので、もしかしたら、脱皮に必要な栄養素が足りていないのかもしれないと助言をいただきました。 そこで、今回はときどきサクラエビなどの甲殻類を給餌してみることにしました。 サクラエビもしっかり食べていましたが、シラスほどはきれいに食べていませんでした。 シラスの方が食べやすいのかも… でも栄養バランスは大事です!

オオタルマワシが残したシラスの骨オオタルマワシが残したシラスの骨


給餌と水替えのタイミングも大事です!
給餌を午前中におこない、午後 水替えをおこなっています。 密閉下での飼育なので、残った餌によって水質が悪くなるのを防いでいます。

水替えは意外と簡単です。 オオタルマワシが入っているサンプル瓶と同じサイズのものを準備して海水を満杯に入れ、10℃に冷やしておきます。 そして、そのサンプル瓶の中に、オオタルマワシを移動してまた密閉します。 オオタルマワシを移動するときは、深めの小さなお玉を使っておこないます。 クラゲをすくう道具と同じです。

オオタルマワシをお玉で移動しているようすオオタルマワシをお玉で移動しているようす


今回、これまでの飼育と少し変更した点があります。 それは飼育に使用している海水です。 オオタルマワシがくらしているのは、外洋で、しかも深海です。 沿岸域とは違い、漂流物や不純物が極めて少ない環境でくらしていると考えられます。
そこで、クラゲの飼育方法を応用し、クラゲのポリプを飼育する時に使用している、フィルターできれいにした海水を使用してみることにしました(私たちクラゲ担当は、ポリプ水と呼んでいます)。 ポリプ水を使用して、水替えをおこなったところ1か月が経過しても「タル」がきれいに残っているのです! タルは、サルパやヒカリボヤでできているので、なかなか代わりのものが見つかりません。

以前は、搬入から2週間もしないうちに、タルがなくなってしまいました。 タルがなくなってしまった後は、指サックで「人工タル」を作って入ってもらったりもしていたのですが、浮力調整が難しく、うまく泳げなくなってしまうのが課題でした。 今回は、タルが残っているので、1か月経過しても泳ぎ回っています

ただ、一つ不思議なことに気が付きました。 今回、オオタルマワシが入っていないタルも採集されていたので、同じようにサンプル瓶に入れてキープを試みました。 予備のタルになったらいいなと思ったのです。 しかし、3週間ほど経過したときに、しぼんできてあっという間に溶けてしまいました。

まだ、正確なことはわかりませんが、もしかしたらオオタルマワシは、自分の「タル」をきれいに保つために、タルの中を掃除したり、水通しをよくしたりしているのかもしれません。 ときどき餌をあげていないのに、タルの中で 口や脚を細かく動かしているのを見かけます。 また、タルの外に出ていることもあります。

タルの外にいるオオタルマワシタルの外にいるオオタルマワシ

これからもう少し観察して、どのくらいタルが維持できるか見ていきたいと思います。

現在展示しているオオタルマワシは、底の方で転がっていることがあります。
サンプル瓶での飼育は、水流を起こすことができないので、今後は、オオタルマワシが常に浮遊できるような水槽が作れたらいいなと思っています。
タイミングが良ければ、こんな感じで元気に泳いでいるところを見ることができるかもしれません。


まだ、改善の余地はありますので、これから、オオタルマワシのためにより良い環境を作っていきます。 見守っていただけるとうれしいです!


三重大学大学院生物資源学研究科 附属練習船「勢水丸」(三重大学)での北里大学海洋生命科学部の研究航海
北里大学海洋生命科学部 乗船実習日誌

深海Ⅰ-JAMSTECとの共同研究-

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