みなさんこんにちは。ひとり旅では、宿はなるべく安く抑えておいしいものをたくさん食べたい派、獣医師の松田です。
さて、みなさんは愛媛県の松山市といえば何を思い浮かべますか? 道後温泉、松山城は外せない観光スポット。「坊っちゃん」や「坂の上の雲」の舞台にもなっており、みかん、鯛めし、鍋焼きうどん、一六タルトなどなど、おいしいものもたくさんあります。
観光協会の回し者のような出だしになりましたが、私が今回言いたいのは松山の魅力だけではありません。今年の 9月、松山ではなんと、あの第32回日本野生動物医学会大会がおこなわれたのです!!
会場となった松山大学「あの」と言われてもぴんとこない方も多いと思いますが、日本野生動物医学会は、野生動物(広義には動物園や水族館で飼育されている動物も含まれます)に関わる獣医師や飼育員、研究者、さらには学生などが一堂に会して研究発表やセミナーなどをおこなう、野生動物界隈の一大イベントです。今回私は、この学会に参加するべく松山に発ちました。
学会は通して3日間の開催で、会期中にはそれぞれの分野に特化したセミナーがおこなわれたり、海外から来ていただいた先生の講義の時間もありました。普段なかなか集中して勉強することが難しいことを、専門家からじっくりと学べる機会はとても貴重です。そして、それらと並ぶメインコンテンツは、参加者たちが持ち寄った演題を発表していく「口頭発表」や「ポスター発表」です。
発表の内容は多岐にわたり、動物園や水族館の獣医師であれば、それぞれの施設での症例でおこなった検査や治療について、大学などの研究者であれば、それぞれの専門分野について、などなど…。ひとつの学会として扱うには広すぎるような発表を聞くことができます。そして「野生動物」が包括する生き物は先述の通りとても多いので、発表にはリスからゾウ、ヌタウナギからシャチまで、さまざまな種類の生き物が登場してきます。水族館で働いているだけでは話を聞くことのないような生き物の詳細な研究を聞くことができるのはとても面白かったです。もちろん楽しむだけでなく、えのすいに帰ってから応用できそうなことなども考えながら聞いていましたよ。
そして私はと言いますと、えのすいのミナミアメリカオットセイでおこなってきた心電図検査についてデータをまとめ、ポスター発表をおこないました。
そのときに使用したポスターがこちら。

おや、ポスターの右上の写真、なんだか見覚えがあるような…?

そうです。前回の私のトリーター日誌で撮影したと言っていたミナミアメリカオットセイの「ルシア」「ライラ」「セシ」の集合写真は、このポスターで 3頭のことを紹介するための写真だったのです。これで前回の“ふり”は回収です。
これもまた以前のトリーター日誌でお話ししたのですが、オットセイの心電図についてまとめて報告されている研究は多くありません。また今回は、麻酔をかけないでオットセイに協力してもらいながら心電図を記録した例なので、練習次第で生き物の負担が少なく心臓の検査ができそうだということも報告できました。発表のときには「自分の施設でもやってみようかな」という声もいただき、発表の目的のひとつでもあった、心臓の検査が広めていくことがちょっとは達成できたかなと思います。これから検査が普及していきさらにデータが集まって、心臓の疾患の早期発見・早期治療ができるようになっていけばいいなというのが私の小さな野望です。
学会はいろいろな発表を聞いて自分の知識をアップデートする場でもありますが、発表をすることで自分たちが取り込んできたことについて知ってもらう場にもなります。ひとつの動物園や水族館では、得られるデータや出会う症例には限りが出てきてしまいます。でもそれが学会などの場で共有できれば、それは全体の知識として活かせるようになります。えのすいの生きものたちの健康を守ることがもちろん私たちの一番の役目ですが、別の場所で誰かが出会うかもしれない病気のために、こうして学会などに赴いて発信することも大事にしていきたいなと思った松山への出張でした。あくまでついでですが、出張先でおいしいものも食べることができたらなお幸いですね(鯛めしおいしかったです)。