2009年05月01日
トリーター:伊藤

泥の海を訪ねて( 7)


生きたキイロホソゴミムシを見られるのは世界中でここだけ!

きょうから 5月テーマ水槽「干潟・マングローブの奇妙な面々」がスタートです。
普通、水族館ではクローズアップされない変り種を選び展示しています。
本種を、生きた状態で、生態展示した水族館はありません(世界初・・・ たぶん)。
そもそも水族なのか?私の中で水族とは、「海や川の中や周辺に生活の場を持ち、水を頼りにして生きる生物」と考えていますから。
干潟や海浜に進出した昆虫は極わずか、それゆえに特殊で面白いはずです。
今回の特別展でもっともマニアックなキャラですが、個人的に一番の目玉である本種の展示は次の手法をとっています。

1.生態展示
生息環境を再現した水槽内で自由に生活する姿を探してください(リンゴの種を探す感じで)。

2.標本展示
1では隠れて見えないこともあります。レンズ越しにその姿をじっくり観察ください。

3.映像展示
1、2では小さすぎてちょっと・・・ という方はモニターで本種の行動をご覧ください。

3段構えの展示にしたのは理由があります。
5月は本種の繁殖シーズン、いい換えれば卵を産み、およそ 1年間の一生を終える時期でもあるからです。
水槽内を現場に近づけたのは、あわよくば本種が水槽内で次世代を残してくれたらと淡い期待をしてのこともあります。どきどきです。
おそらく、水族館でこれほど本種をクローズアップすることはもうないかも知れません。
願わくば本種が「世界一希少な昆虫」の称号を返上し、潮干狩りの風物詩となるほど栄える日が来て欲しいものです。
展示開催期間は 1か月、ぜひ一度見に来ていただけたら幸いです。

・・・ そして、かつて私にキイロホソゴミムシのことを教えてくれた先輩と、本種に関わる機会を与えてくださった天国の上司に、本展示を捧げます。

[きょうの写真]
キイロホソゴミムシの写真
(実は、5年前から水族館のとある場所に掲示していましたよ)

バックナンバー
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