見えないモノを見せたいモノの
サキグロタマツメタ
過去のシリーズで紹介した外来巻貝です。現在テーマ水槽の一角を担っています。
本種の入手には宮城県にある石巻専修大学の大越健嗣教授とその一番弟子、伊藤希さん(私と故郷が一緒なのでもしかして親戚かも?)をはじめとする学生さんたちに多大なご協力をいただきました。
大越先生たちと知り合ったきっかけは深海調査の船の上でした。先生は貝の成長(貝殻の形成)を専門分野としており、深海のヒラノマクラから干潟のアサリまで幅広く対象とされています。
宮城県の干潟において、定期的にサキグロタマツメタの調査と駆除をおこなっていると聞き、駆除対象の個体を譲っていただけるようお願いしたところ、快くOKしてくださいました。
こうして展示できたのも先生たちのご協力あってのこと、本当にありがとうございます。
さて、ご協力いただいたからには、何とかうまく展示したいもの。しかしこの貝、展示の難しい飼育係泣かせの貝なのでした。
ざっと挙げてみると
1.砂に潜るのが大好き(潜る=見えない)
2.意外と飼育が難しい(野外では爆発的に殖えるのに)
3.動きがゆっくり(変化に乏しく退屈かも)
これらの問題が完全にクリアーできたとまではいえませんが、以下のようなことを心がけて展示しています。
1.固めた黒い砂の上に茶色い砂を薄くひき、姿を探せるように
2.ひらすら水換え、餌やり留意
3.特殊な行動の跡(丸く穴の開けて食べたアサリの殻)を一緒に展示
といったところです。
本当は本種が泳ぐようす(=フローティングといい、大越先生が発見)や、アサリを包み込んで食べている様子も常に見せたいのですが、生き物のペースを人間のペースに合わせて展示する難しさを今回も痛感しています。
もっと精進して生物の面白さを余すことなく展示できるようにしたいと思います。
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サキグロタマツメタの調査風景
おびただしい数の卵を駆除(トラックの荷台にどっさり)
逆さまに浮かんで移動「フローティング」