2009年06月17日
トリーター:伊藤

泥の海を訪ねて( 12)


3年目の大変身、さらに!

少し前の日誌で、当館生まれのシロスジコガネがサナギになったお話をしました。
今回は嬉しい続報です。
サナギになって約 1か月、無事、新成虫が羽化しているのをケース越しに確認しました。
しかし、まだ 4月、本種の野外での出現時期を考えるといささか早い気がします。
クワガタでは羽化後も数か月にわたりじっと蛹室内で過ごす種もあるので、掘り出そうかどうか迷いました(昆虫は本能の塊のような生命体ですから、一度生活リズムを崩すと取り返しがつきません)。
そうこう考えているうちに、成虫たちが土を掘り返して動き始めましたので、一か八か、掘り起こしました。
無事成虫になった個体は・・・
オス 2匹とメス 2匹、体色の赤がとても鮮やかで感激です。が、再度繁殖を狙うにはちょっと頼りない数です。

今回羽化した新成虫たちは野外から採集してきた親が産卵した子どもたちです。
つまり親たちはすでに野外で交尾していた可能性があります。水族館としては、完全に飼育下で育った今回の新成虫たちが産卵に成功してこそ、「カンペキな飼育下繁殖」となります。

経験上、本種の成虫の寿命は極めて短い・・・
悩む時間はありません。
3年前に成功したのと同じ産卵床を水槽に設置し、4匹の「親候補たち」を放しました。
産卵してくれることを願いながら。

彼らはしばらく土の中をもこもこと動き回っていましたが、セット後 2週間ほどで次々と寿命を終えていきました。
天に祈りながら残された産卵床を調べていくと、ありました!白くて小さな卵が数十個。
世にも珍しい?海の昆虫の 3世誕生です。
現在、それを記念して小窓水槽の左すみの 1窓で成虫の展示をおこなっています(展示は採集個体です)。
短期間だけの展示となりますので、興味がおありの方はお早めにご覧ください。

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産卵床に産み付けられた卵産卵床に産み付けられた卵卵から生まれたばかりの幼虫卵から生まれたばかりの幼虫美しい成虫美しい成虫

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