昨年のトリーター日誌でもクサフグの産卵について書きましたが、もちろん今年も行ってきましたよ!
この産卵を見るのが楽しみすぎて、ショーでお客さまの前に立つたびに、「今すぐにでも見に行きたい」、「絶対その日は見に行く」と言っていました。なんなんだこいつは、と思った方もおられたかもしれません。ただ、私はこんなやつです。フグが好きなんです。
当日は既に先客がおり、少し離れての観察となりましたが、それでもたくさんのクサフグが集まっているのが確認できました!
時計やカレンダーがあるわけでもないのに、毎年決まったタイミングで数千匹のクサフグが同調して産卵するのを見ていると、生き物の神秘さを感じます。規則正しい生活ができていない私にはとてもまねできません。
そして、今回は産卵観察の他に、もう一つの目的がありました。それはクサフグの人工授精をすること。
昨年も受精卵を確認することはできたのですが、育成するほどの数は採集していませんでした。
人工授精をして受精卵を得ることでいくつかできることがあります。
例えば、受精卵を得ることで、卵内の発生、孵化仔魚から成魚までを観察することができます。そしてそれを記録に残し、みなさんに紹介することができます。
また、えのすいとしてクサフグの育成をした経験がなかったので、その経験値をあげるため。他にも、今進めている研究にも必要でしたので、その目的もありました。
もちろん、その先には「展示」という目的があります。
野生では、卵から産まれた仔魚は、そのほとんどが死亡してしまいますが、飼育下では野生下とは比べものにならないくらい高確率で生存させることができます。
水族館では、野生から採集した生物もたくさん展示していますが、人工授精は、野生に極力負荷をかけない方法として、大変優れていると言えます。
産卵に来たクサフグを数個体採集して持ち帰り、無事に人工授精が出来ました。
黄色いものが卵、白いものが精子です。これを混ぜて授精させます。
受精直後の卵。まだ胚胎もできていません。
卵はおよそ5日後に孵化します。これはふ化前日の卵。卵の中では既に目ができており、時おりくるくると卵の中で回っています。
ようやくふ化しました!大きさは約2 mm
体の色は成魚とは全く異なり、ひれも膜状でしかありません。体に比べると大きな口をぱくぱくさせて泳いでいます。これからあっという間に成長し、数か月後には、成魚と同じ色の小さなクサフグとなるでしょう。
今年えのすいで生まれたゴマフアザラシ、ミナミアメリカオットセイに比べると、とってもちっちゃいですが、どこかで、えのすい生まれのクサフグの成長の過程もみなさんにお伝えしますね!
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