2026年07月03日
トリーター:山本

オトヒメノハナガサを飼育する

先日、株式会社 FullDepthとともにおこなった深海生物調査の中で「オトヒメノハナガサ属の一種」が採集されました。そしてなんと、きょう 7月 3日で、飼育と展示を始めてから 2週間が経ちます! これって本当にとんでもないことで、そもそも世界的にも飼育例がほとんどないこの生き物を、ここまでの期間展示ができたことは過去にないことだと思いますし、正直我々も驚いています。得られる情報がすべて新知見! すごいことです。
ぜひこの機会に、一人でも多くの方に生きた姿を見ていただきたいので、ここで紹介させてください。
ちょっといろいろ説明を飛ばしすぎているので、そもそも「オトヒメノハナガサ」とは…? という方は こちらの日誌 を見ていただけると幸いです。

まずは、展示ではお伝えできない、オトヒメノハナガサ(※現在展示では「オトヒメノハナガサ属の一種」としていますが、以下は便宜上「オトヒメノハナガサ」と呼ばせていただきます。)を採集したときのようすから。
調査をおこなったのは 「ホムラツノガサクラゲ」が採集された時 と同じ熱海沖。杉村トリーターと八巻トリーターと私、そして FullDepthの伊藤さんと一緒に乗船です!

今回の調査は、水中ドローンのテストも兼ねて少し浅場の 200 mくらいでおこないました。八巻トリーターがドローンを操縦しているときに、20 cmほどのオトヒメノハナガサの姿が。

普段の調査では水深 500 mくらいで見るイメージなので、こんな浅場で見るのは新鮮な感じがしました。通常水深が深くなるにつれて水温が下がるため、船上での生物のキープや輸送の難易度が上がります。こんな浅場でオトヒメノハナガサがいるなんて! しかも大きすぎず、展示にちょうどいいサイズ! これは絶対絶対絶対欲しい… !

操縦を伊藤さんに代わり、いざ採集です。さすがの伊藤さん、ほとんど傷をつけずに、オトヒメノハナガサを採集することができました! いきなりの大釣果です!

船上ではなるべく生息域に水温を合わせながら、傷つけないように容器に移し替えたり、時折水換えをしたり、ドキドキしながら維持します。

その後の調査ではいろいろありましたが、無事に終了して夕方には帰港しました。どの水槽でどう展示するのがベストか、水温はどうするかなど、担当者で相談しながら水族館に戻り、いざ水槽に搬入です。

今回は、クラゲサイエンス にある一番大きな水槽で展示することにしました。実はオトヒメノハナガサは、過去に数日展示したことがあった のですが、わけもわからず、あれよあれよとだめにしてしまったことを覚えています。次こそは。これまでのすべての経験を参考にしながら、最高の選択をしていきます。

これが搬入後のようすです。おお、いいサイズ感。当初は弱気で、土日まで展示ができたらいいねぇなんて言っていたのですが、どうやら 3日をこえてもまだ大丈夫そうです。
そこで、ようすを見ながらいろいろ餌を与えてみることにしました。最初に、サイズ感的にも一番食べそうだなと思っていた「コマセアミ」をあげてみます。

口部分にくっ付けると、20 〜 30分してぽいっと捨ててしまいました。
これはクラゲ飼育あるあるなのですが、欲しくないとき、クラゲたちは触手にくっつけた餌を明らかにはなします。この感じ、コマセはいらなさそうですね。

次に、他のクラゲにもあげている「生シラス(江の島産! )」をあげてみると…

あっという間に取り込んでしまいました! これは! 驚きです! コマセを与えたときとは明らかに反応が違います。


シラスを食べることがわかったおかげで、現在まで飼育の維持をすることができています。今までオトヒメノハナガサがどんなものを食べているかすらわかっていなかったので、これはとんでもない発見です! しかも、希望的観測ですが、搬入したときよりも状態がよくなっている… ような?


他にも、「オキアミ」は食べないけど「サクラエビ」は食べるなど、単純に魚だけを食べるわけではないこともわかってきました。さて、ここからどこまで飼育を続けることができるのでしょうか。大きな責任感も感じていますが、可能な限り情報を集めつつ、なるべく長く飼育できるように頑張りたいと思います! また、今回採集されたものは、いわゆる「オトヒメノハナガサ( Branchiocerianthus imperator )」なのか、はたまた別の種類なのか… それを調べるために、クラゲの研究でいつもお世話になっている、黒潮生物研究所の戸篠さんに遺伝子の解析をしていただいています。結果が楽しみです!


実は、今年の 4月からは、継続して 「オトヒメノハナガサ属の一種」の標本も展示 しており、昔は憧れの生物であった「オトヒメノハナガサ」が、なんだか急にえのすいに集まって、私たちに深く関わり始めているように感じています。この前の 笠川トリーターの日誌 にもありましたが、水族館の「飼育して観察することができる」という武器を手に、今後も私たちなりに科学の歩みに貢献していきたいなと思っています。

何度も言ってしまうのですが、この「オトヒメノハナガサ(属の一種)」を生きた状態で観察できることは、全然普通のことではありません! 世界的にみても本当に本当に貴重です。ぜひ、えのすいにお越しの際は、クラゲサイエンスまで足をお運びください! !

クラゲサイエンス

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