こんにちは、藤田です。
4月も半ばになり、一段と暖かくなってきましたね。
外に干しているウェットスーツが早く乾くようになってきて助かります。
さて、今回のトリーター日誌はなんと約 5か月ぶりのウツボの話です!!
私としたことが、サンゴとか別の話をしていたら全然ウツボの話ができていませんでした。
というわけで、きょうは最近イチ押しの「ワタユキウツボ」をご紹介します。
まず、ワタユキウツボというウツボをみなさんご存知でしょうか?
ウツボ科 ウツボ属に分類され、すらりとしたシャープな顔つきの大変美しいウツボです。
ワタユキウツボ茶色地の体にクリーム色の雪の結晶のような模様があり、この模様が和名「ワタユキウツボ」の由来にもなっています。
大粒の綿雪がふわふわと降り注ぐ情景が思い浮かぶような趣のある和名ですよね。
ワタユキウツボが日本で認知されるようになったのは割と最近のことで、2023年に長崎県産の標本に基づき日本初記録として報告され、和名も提唱されました。
そんなワタユキウツボですが、実はえのすいでは2021年から飼育をしている個体が 1匹だけいます。
いつもお世話になっている、アナゴ筒漁をしている漁師さんから「ウツボが入ったよ」と連絡を受けて引き取ったところ、このワタユキウツボが入っていたのでした。
当時はまだ和名もないウツボだったので、「この子はユリウツボか? いやちょっと違いそう・・・ 誰かな~??」と思っていました。
そして論文などを調べたところ、「これは Gymnothorax niphostigmus かも!」と後にワタユキウツボと和名のつく、台湾で1996年に新種記載されたウツボの仲間にたどり着きました。
2021年の搬入直後日本初記録の論文が出版され本種にワタユキウツボと和名がついた後も、相模湾からの採集記録はこれまでなかったので、相模湾が分布の北限記録となること、成長による色彩変化など飼育によって新たに分かった情報を、昨年論文にまとめて報告しました。
こちらの論文は誰でも読めます(無料! 日本語! ぜひチェックしてください)!
Northernmost record of Gymnothorax niphostigmus Chen, Shao & Chen 1996, (Muraenidae) collected from Sagami Bay, Japan, with notes on ontogenetic changes of coloration with growth / 相模湾から得られた北限記録のワタユキウツボ(ウナギ目:ウツボ科)および本種の成長にともなう色彩変化に関する新知見
本論文を執筆するにあたって、相模湾産の飼育個体がワタユキウツボだと証明するために詳しいデータを集める必要がありました。標本であればさまざまな角度から簡単に観察することができますが、飼育個体ではそうはいきません。動かずじっとしてもらうために麻酔をして、さまざまな部位の撮影や計測をおこないました。
その時のようすがこんな感じです。
位置を調整中
パシャリじわじわと動いてしまうので全身のようすが分かる写真を撮るのも一苦労です。
ちなみにどちらも園山トリーター撮影で、藤田は補助しかしていませんね・・・
口の中もチェック麻酔で寝ている間に口の中もちょっと失礼して、歯の数や形なども観察します。
ウツボの歯には種類を判別するための特徴が含まれているので、これも重要なデータなんです。
この他にも骨の数を見るためのレントゲン撮影も獣医師の協力のもとおこないました。
そしてこのワタユキウツボ、面白いことに、光ります。
ウツボの仲間にはブラックライトを当てると蛍光に発光する種類がいますが、ワタユキウツボにも試したところ鮮やかな蛍光緑色に光りました。
見事な蛍光グリーン周りを暗くして至近距離でライトを照射してこのような蛍光が観察できるので、展示水槽でお見せするのはちょっと難しいのですが、このきれいさ鮮やかさ、伝わりますでしょうか。
全身にライトを当てても吻先(ふんさき)だけは光らないのもまた、不思議なところです。
このようにウツボが光る理由はまだ詳しくは解明されていません。ワタユキウツボは深海に近い深い海で暮らす種類なので、紫外線から身を守るためとは考えづらく、繁殖相手を見つけるのに役立ったりするのかなぁ、などと妄想は膨らみます。
きっと今後の研究で明らかになっていくことでしょう。
展示中のワタユキウツボさて、このように貴重なデータの収集に協力してくれた相模湾産のワタユキウツボは、論文の公開に合わせて展示水槽デビューしました!!
現在生きているワタユキウツボを見られるのはえのすいだけですよ。
先ほど標本なら動くこともなく簡単に観察できるのに、と書きましたが、生きて動いている姿を観察できるのは、水族館という博物館にとって最大の強みです。
私は、標本にも生体にもそれぞれにいいところがあり、生態解明のための研究に役立つと信じています。
だからこそ水族館では生物のようすを観察して成長の過程を記録したり、繁殖行動についての情報を集めたり、その生物を知ってもらうために、分かりやすく楽しく伝わる展示を作っていかなければならないと思います。
と言いつつも、展示水槽の中央に来てほしいのに、よく水槽すみのはじっこに隠れてしまいがちなワタユキウツボ・・・これじゃあかわいいお顔もよく見えません。
ワタユキウツボの気持ちに寄り添って、もっと観察しやすい水槽にできるように頑張ります・・・!
ぜひ、ワタユキウツボに会いに来てくださいね。
真ん中に来てくれるよう奮闘中…![2020年07月17日 ウツボ好きトリーターのウツボの話]
[2020年09月09日 ウツボ好きトリーターのウツボの話 2]
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